『豊臣兄弟!』の物語はここから始まる? 後半戦で期待したい“小一郎”仲野太賀の覚醒

『豊臣兄弟!』はここから面白くなる

「あのふたり(秀吉と小一郎)にとっての小袖はいったいなんなのでしょうね」

 大河ドラマ『豊臣兄弟!』第30回「清須会議」で印象的だったのは、ねね(浜辺美波)のこのセリフだ。

 ねねをはじめ、なか(坂井真紀)、とも(宮澤エマ)、あさひ(倉沢杏菜)、慶(吉岡里帆)たちが信長の嫡孫・三法師の小袖を秀吉(池松壮亮)に頼まれ縫いあげた。面倒な仕事ではあったが「おかげで力がわいたかも」とあさひ。「やらなきゃならんもんがあると。人ってそういうふうにできているもんさ。あの子たちのやさしさかねえ」となか。女たちのやりがいを秀吉たちが気を利かせて作ってくれたのではないか、という推測で、最後にねねが「あのふたり(秀吉と小一郎)にとっての小袖はいったいなんなのでしょうね」と思いを馳せる。

 織田信長(小栗旬)という大きな崇拝対象を喪失したいま、秀吉たちの生きるモチベーションは何になるのか。それが第31回以降、描かれることになるだろう。

 第30回の段階では赤い瓢箪柄の小袖を着た三法師が、秀吉のモチベーションの象徴のように見える。瓢箪は秀吉のシンボルではあるが、そこはかとなく血模様のようにも筆者には見えて不吉な気持ちになった。

 信長亡きあとどうするか、三法師をめぐって暗躍する人たちに、清須会議の前にこまごまと根回ししていく秀吉と小一郎。プレ清須会議、真・清須会議を経て、三法師お披露目の当日、秀吉はお腹を壊したと事前に伝えながらも、三法師を抱えてサプライズ登場を演出、織田家筆頭家老になったと声高に宣言する。

 飄々と大胆なことをする秀吉に、唖然となる一同。そのとき、小一郎(仲野太賀)の目つきがきっと深刻に変わっている。信長が亡くなったとき、「わしが変えるわ。このわしが上様の思いを継ぐ」と決意を語った秀吉のことを思い出している。「やったね、兄上」なのか、「そうは言ったもののちょっと度が過ぎてないか」なのか、小一郎の心情はいかに。

 行き過ぎた秀吉に危険を感じるのは、市(宮﨑あおい)だ。兄・信長が死んですっかり覇気を失っていた市に、秀吉は勝家(山口馬木也)に嫁ぐよう勧める。市も勝家も秀吉の提案に耳を貸す気はなかったが……。

 第31回では市は秀吉に対抗するため勝家に嫁ぐ。昔から秀吉は市に格別な思いを寄せているようだったが、彼女は秀吉に心をゆるしていない。どんなに秀吉が優秀でも、対等には思っていないところがある。

 やがて勝家とお市は秀吉たちと戦うことになるーー賤ケ岳の戦いだ。

 『豊臣兄弟!』はこれまで織田信長(小栗旬)がいた間は、彼が強烈すぎて、豊臣兄弟の派手な見せ場が少なめだった。三英傑のひとり秀吉がそうなるうえ、輪をかけて主人公である小一郎の活躍の場が少ないのは否めない。なんとか出番をつくるため、本能寺の変を小一郎が近くで目撃しているオリジナル展開は、やや苦しいものがあった。

 でもこれからは豊臣がメインになる。織田亡きあと、いよいよ秀吉が天下統一に動き出す。これからが、秀吉の名参謀としての小一郎の本領発揮となるはずだ。

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