仲間由紀恵、多部未華子、村上穂乃佳 『風、薫る』ヒロインを導く“運命の女性”たち

「アメリカで学問に励み、賊軍となった会津の汚名をそそげと言われて12歳でアメリカに渡った」のに、帰国したところで得た知識を活かせる場所がなく、大山巌(髙嶋政宏)と結婚することで「鹿鳴館の華」となった捨松。「奥様」になるのが当然の時代に「奥様」になり、「奥様」の人生を全うしてきた侯爵夫人・千佳子。「貧乏で売られ」女郎となったセツ。彼女たちとの出会いを通して、りんと直美は、他者を知り「社会」を知る。
第45話で直美が寛太(藤原季節)に「病院で実習するようになって、いろんな人に会って。生まれたばかりの子、死にそうな人。いいやつもいやなやつも。そしたらどんな人なのか見てみたくなった」と「母親探し」の理由を話すことからも分かるように。

3人の女性たちの魅力は、多部未華子、仲間由紀恵、村上穂乃佳たち演者の魅力ともい言えるが、何より惹かれずにはいられないのは、どんな状況に置かれていても、その葛藤の先に、その人らしさが見えることだ。例えば捨松の、結婚し「鹿鳴館の華」になることを「手段」とすることで、なんとしても自分の人生の道を自分で切り拓こうとする強さだ。その姿が直美を鼓舞し、自分の「This is my life」と言える道を確立しようと奮起させるに至った。また、千佳子が吐露する、年齢を重ねても本質的には変わらないままの自分自身への戸惑いは、「侯爵夫人」「奥様」という枠組みどころか、時代すら越えて、多くの女性たちが共感せずにはいられないものだったと言えるだろう。
そして、「地獄」とも形容される過酷な状況に身を置きながら、無理心中を図り強引に薬を飲ませてきた男性が「1人で死んだ」ことを悼んだり、「母に捨てられた」と感じている直美を気遣ったり、新聞に書いたことを謝罪にきたシマケンに対して感謝の言葉もちゃんと添えたりするセツの優しさに、シマケンが書いた架空の「夕顔」の物語ではなくとも心動かされずにいられない。

第53話において、「産んですぐに子を捨てた」直美の母親のことを非難するのでなく、自分の身に置き換え「産む」という選択をしただけですごいことであり「よっぽどあんたに会いたかったんだね」と言うセツに対して、直美はしばらく沈黙する。その間直美は当時の母に思いを馳せずにはいられなかったことだろう。
そしてそれは、いずれ直美の、本当の意味での自分自身の肯定に繋がっていくに違いない。そうやって女性たちは、緩やかに繋がり合う。互いにいい影響を与え合い、それぞれの人生が少しずつだけど好転し、豊かなものになっていく。そんな理想的な女性たちの連帯を、『風、薫る』を通して、私たちは見つめているのかもしれない。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK






















