『エルピス』から『銀河の一票』へ 政治の話ではなく“私たちの話”として受け止めるために

『銀河の一票』は“私たちの話”のために

主人公・茉莉による「光を探す」物語

 子どもの頃から「目指す何かを見つけるとそれに向かって一直線」で「よく迷子になる」茉莉をいつも明るい方へ導き、時に迷子の彼女を探し出してくれたのは亡き母・瑠璃(本上まなみ)であり、父・鷹臣の政治家としての指針でもあった宮沢賢治の「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はありえない」という言葉だった。

 でも、第1話冒頭の茉莉が手に持つおもちゃの電球は壊れてしまっていてもう光を灯すことはなく、見上げたその先の階段は、カメラが茉莉と共に見上げているせいか、なんだか歪で底知れない物体のように見える。つまり第1話は、そんな主人公・茉莉による「光を探す」物語なのだ。

 最初、彼女は日山の「強さ」を「明るさ」だと信じた。なぜなら「強さって明るさ」だと言っていた母の言葉があったからだ。だからこそ、誰にも見せていない手紙の内容を明かした。でもそれは、彼女にとって不本意な結果に終わる。だからこそ、日山にあげるはずだったジャムが、本当に茉莉が求める「明るさ」を持った人・あかりの手に渡ることが、何より幸福な結末なのである。

 もう一つは、月岡あかりという人物が、常に“投げられたボールを返してくれる人”だということだ。

 ジャムのお礼のサンドイッチ。さらに、あかりの店で茉莉が言った「政治の話じゃないです、私たちの話です。私とあなたの」という言葉に対し、終盤あかりが「あなただって世界の一部でしょ。私が幸せでいるために、あなたにも幸せでいてもらわないと」と返したのもそうだ。あかりは常に、茉莉の言葉にちゃんと応える。「政治の話はよくわからない」と一度は逃げつつ、そのことを謝罪し、時間をかけて彼女自身の言葉に置き換えた後、ちゃんと返してくれるのだ。

 そして、茉莉が接待先で起きた様々な出来事に対し、「私に似合うと思って買った」はずのピンクのスーツを「よこしまな気持ちで着た服」と否定するしかなくなった時、あかりが「かわいい」「似合ってる」と言ってくれたから、本来の自分の思いを肯定できたように。あかりは決して茉莉を「1人にしない」のである。初めて会ったにもかかわらず、だ。

 月岡あかりは、暗闇の中にいた茉莉を照らす光になった。「個人の幸福」が「世界ぜんたいの幸福」に繋がるのなら、彼女たちが挑む選挙は、そしてそれを描いたこのドラマは、それを見ている私たちドラマ視聴者の心も照らしてくれるに違いない。

■放送情報
『銀河の一票』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:黒木華、野呂佳代、渡邊圭祐、倉悠貴、小雪、本上まなみ、岩谷健司、山口馬木也、木野花、岩松了、坂東彌十郎、松下洸平ほか
脚本:蛭田直美
演出:松本佳奈、藤澤浩和、瀧悠輔、稲留武
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作プロデュース:植木さくら、森田美桜
音楽:坂東祐大
制作協力:AOI Pro.
制作著作:カンテレ、MYRIAGON STUDIO
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/ginganoippyou/
公式X(旧Twitter):https://x.com/gingaippyou
公式Instagram:https://www.instagram.com/gingaippyou/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@gingaippyou

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