2026年冬アニメとは何だったのか? 原作もの×ラブコメ×異世界まで20代オタクが超激論

2026年冬アニメを20代オタクが超激論

 2026年も早々に四分の一が過ぎ、冬アニメの多くも完結を迎えた。今期も『呪術廻戦』や『葬送のフリーレン』のような大手シリーズの続編から『死亡遊戯で飯を食う。』『花緑青が明ける日に』のようにユニークなビジュアル・構成の作品まで幅広い種類のアニメが公開された。

 リアルサウンド映画部では2025年に引き続き、20代のオタク4名で座談会を開催し、TVアニメからアニメ映画に至るまで多様な作品が揃った冬アニメについて、寒さに負けないくらいに熱く語り合った。

『超かぐや姫!』VS『閃光のハサウェイ』

『超かぐや姫!』©コロリド・ツインエンジンパートナーズ

徳田要太(編集者/以下、徳田):つい先日(※3月20日)、『超かぐや姫!』が「一斉ポスト可能上映」というなかなか前例のないイベントを開催していましたね。ヤオヨロ〜。プロモーションも含めいろいろとアイコニックな作品になりましたが、みなさんは本作をどう観ていましたか?

舞風つむじ(ライター/以下、舞風):山下清悟さんが初めて監督を担当する作品ということも相まって、公開前からかなり話題にはなっていましたよね。アニメーションとしても折々にデフォルメを挟んだりと上手い作りだったと思います。彩葉の友達が両方インフルエンサーだったりとクリエイター賛美っぽさはあるなと感じたのですが、それを加味してもいい作品でした。

ホワイト健(カナダ在住ライター/以下、ホワイト):個人的には画が非常に「イラスト」っぽいのが面白かったです。『小市民シリーズ』や『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』などでも感じたのですが、動いているキャラクターたちが伝統的な意味での「アニメ絵」よりSNSで流れてくるような「キャラ絵」っぽい。そうしたキャラデザに加えて、VRChatなどに寄せたVR空間の背景美術やシェーディングだったり2Dと見分けがつかないセルルックCGだったりと技術的な側面が楽しい作品でした。画風でもストーリーでも全力でSNSやVTuberなど現代のインターネット的なものを表現しきろうと振り切っている印象でしたね。

クコ(ライター):僕も技術的なところで公開前から注目していて、公開直前に山下監督が「『こういうプロモしてるアニメって、大体期待外れなんだよなァ』と感じている皆様」「お気軽に見てみてください。ガッカリさせないよ〜」(※1)と自虐めいた投稿をしていたのを覚えています。アーティスティックではあるかもしれないけど、物語はどうなんだろう……と思って観たらしっかりエンタメとして強い作品だったのが意外でした。『NARUTO』や『チェンソーマン』に参加した頃の山下原画が観られるかと思いきや、どちらかというと仕上げや撮影のほうで作家性が発揮されていたかなと。良い意味で癖のない仕上がりだったと思います。

ホワイト:ポスト可能上映やボカロ曲のカバー、途中で出てくる「嘘サジェスト画面」だったりと、とにかく今の時代を保存しようという姿勢が、時代を超えたかぐや・ヤチヨの物語とうまくはまっていると思いました。

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徳田:あとアニメ映画といえば『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』(以下、『キルケー』)ですかね。IMAXで何回も観ちゃいました。

舞風:前作に比べて画面が観やすくなっていましたね。今回は夜の戦闘シーンでも何が起きているかけっこう分かりやすくて。カットの構図や芝居など、細かいところまで映画としてうまく作られていた印象でした。

徳田:「『ガンダム』としてどうか」とかは置いておいて、「ハーラちゃんが死んだのはなぜ超悲しいのか」を考えれば、映画としていかにおもしろいかわかると思います。モビルスーツなんて移動させるだけでとんでもない軍事行動なんだというリアリズムが映像で見事に表現されていました。

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オリジナルアニメ映画とインディー要素

クコ:逆に、『キルケー』のリアリズムとは別の方向性を追求していた『花緑青の明ける日に』(以下、『花緑青』)も良かったです。最近はどれだけ新しいルックを出せるかという勝負になりがちなところがあるようにも感じるんですが、そのなかで元日本画家の四宮義俊監督が全体を通して一貫した新しい画面を作り上げていて。Miyu Productionとの共同制作の産物なのかもしれませんが、淡めのパステルっぽい色彩の基調などは『化け猫あんずちゃん』にも通じる芸術性がありました。

舞風:演出の手数が多い作品でしたね。お酒に酔ったシーンでストップモーションに切り替わる演出が好きでした。最近はCloverWorksなども『ぼっち・ざ・ろっく!』や『その着せ替え人形は恋をする』で粘土や模型を用いた実写映像を取り入れたりしていますが、『花緑青』ではそれに「酔っ払ったことで視界が変わる」という明確な演出意図があったのが評価できました。その上で背景美術ばかりに焦点が当たるわけでもなく、後半では動画もしっかりしていたりとバランス感の良い作品でした。

徳田:ストップモーションも含めて実験アニメーション的映像をTVアニメで見かけることが増えた気がしませんか? 『葬送のフリーレン』(以下、『フリーレン』)の青梅美芽さんによるEDアニメーションも象徴的です。

『葬送のフリーレン』第2期ノンクレジットエンディング映像/EDテーマ:「The Story of Us」milet/フリーレンED
Ave Mujica - Imprisoned XII (Official Music Video)

クコ:OPとEDはやはりインディーを含めた非商業のアニメスタイルで遊びやすいんだと思います。最近では『ダンダダン』第2期のEDをインディーアニメの巨匠であるこむぎこ2000さんが担当していたり。

舞風:『負けヒロインが多すぎる!』でも『ダンジョン&テレビジョン』で話題になった巡宙艦ボンタさんをはじめ、ユニークな作風をもつ作家によるEDがありましたし、あとは『帝乃三姉妹は案外、チョロい』で『メイクアガール』の安田現象さんがEDを制作していたりしていますね。

クコ:ハイエンド寄りのアニメはこれ以上本編の質を上げるのが難しい領域まで来てしまっているので、演出の手法や細かい作り込みなどにリソースを割いているのかなという印象を受けます。

徳田:なるほどね……。他のアニメ映画はどうですか?

舞風:『迷宮のしおり』を救いたいという話がしたいです(笑)。僕は『マクロス』シリーズが好きなんですが、実際に観てみると河森正治はそれほど参加していないんじゃないか? と感じました。途中でロボットのシーンが挟まるのですが、その部分は間違いなく河森監督でしたね。

徳田:(笑)。舞風さんには『パリに咲くエトワール』(以下、『パリエト』)のインタビューも構成してもらいましたね。

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舞風:CGで表現されるバレエのシーンについて、最初にクコくんと話したときは少し没個性的になってるのでは、と思っていたのですが、逆に「日本人でもこのなかに入っていけるんですよ」という演出としては上手くいっていたのではないかと感じるようになりました。あと、シンプルに薙刀のアクションシーンが非常に良かったですね。もっと話題になってほしい作品です。

徳田:「棒術マン」が謎にバズっているけどどこまで広がるか……。あとは『マーズ・エクスプレス』も観たんですが、この作品がどうこうというか、僕らくらいの年代でもアニメーションの押井守要素や今敏要素を指摘すればそれっぽく何かを語れてしまう風潮からどうやって脱却すべきか、みたいなことを考えていた(笑)。

ホワイト:確かに海外では押井守、今敏、大友克洋のラインの影響が未だに強いらしく、ファンタジア国際映画祭選考委員のルパート・ボッテンバーグ氏もフランスの作家などに対して「日本のアニメに寄せるよりも自分の独自性を信じて欲しい」と述べたりしていましたね(※2)。そんなタイミングで出てきた『アメリと雨の物語』は「子供の視点から見た物語」というコンセプトを画風などにも反映しているらしく、しっかり他にはないスタイルを確立できているのかな? と感じます。

徳田:そういえば『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』は北米では公開されたんですか?

ホワイト:まだですね。テレビ版が公開されたときはコアな作画マニアたちの間で話題になった覚えがあるので、ぜひとも流して欲しいところではあるんですが。英語圏、スペイン語圏にはアンテナの広い作画オタクが多いんですが、メジャーなシーンでは『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』などインディー寄りの作品は話題になりづらいのが少々残念です。

徳田:なるほど。亀山陽平監督にはインタビューしたんですが、技術的な話をしすぎたので英訳したほうが読まれるかもしれない(笑)。

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『葬送のフリーレン』『呪術廻戦』

徳田:TVアニメでは、『フリーレン』はいろいろなジャンルを含みつつ、“現代的”な物語として語られがちですがいかがでしょうか?

ホワイト:私は『違国日記』と比較しながら観ていました。どちらも主人公たちが少しずつ自分や他人について理解していきつつ、フラッシュバックする過去と向き合う、という構造は同じだなと。『フリーレン』は現在と過去で出てくる台詞まで同じだったりするのに対して、『違国日記』は過去とある程度決別しつつ未来に向けて全く違う選択をする、という点で対照的でした。

クコ:『フリーレン』は各話が比較的独立しているのに対して、『違国日記』は物語がリニアに進展していく違いはありますよね。『フリーレン』は過去をなぞる単発エピソードという点で『夏目友人帳』っぽいとも思いました。

舞風:僕はこの二つの作品は、ヒンメルや朝の母親という故人とのかかわりを前提に置きながら現在のことを問い直していくところが、『江戸前エルフ』と近いと感じました。『違国日記』はそこから未来について語ってゆくし、『フリーレン』は過去について考えている。時間に対する向き合いかたにそれぞれ違いがあって面白いです。

『葬送のフリーレン』©山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

ホワイト:戦闘でいえば私は第36話のレヴォルテ対シュタルクの戦闘シーンが好きでした。3DCGの背景に2Dの作画が載る形式でしたが、限られたCG空間を激しいカメラワークとキャラクターの動きで派手に見せる作りが上手いなと。とはいえ、バトルの演出でいえばやっぱり『呪術廻戦』が他の追随を見せない暴れっぷりでした。

クコ:そうですね。周りのマニアたちの間では元々漫画にあった作画パロディを思いっきり広げて中村豊みたいな画面構成を突き詰めたら確かにこういう演出になるよね、みたいな雰囲気がありました。それが作画オタク以外にとっても嬉しかったのかどうかは分かりませんが(笑)。

ホワイト:それと、『呪術廻戦』は日本と海外で受容のされ方が180度違ったのが興味深かったです。今期は特に非常に政治的な読みが見受けられて、特に第51話の「キル・ビル回」はミソジニーと家父長制の権化である禪院家を打倒するという文脈も含めて絶賛されていました。先日の国際女性デーにあわせて開催された南米のデモで真希のイラストが掲げられていたり。星綺羅羅も海外ではshe/herで言及されていて、クィアオタク界隈でも人気になっていました。海外はファンの母数が圧倒的に多いこともあり、日本では見かけない論点も含めて幅広い読みがなされている感覚があります。

舞風:国内で社会状況と関連させた読解として僕が思い浮かぶのはてらまっとさんによる「原子力少年の憂鬱」(※3)くらいですが、ジェンダー論を通した受容は確かに日本ではあまり見ない気がしますね。

徳田:昨年は上海に取材に行って現地の検閲事情などもいろいろ聞かせてもらったのですが、海外のアニメ受容には目を向けていきたいですね。

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バトルものの美学

ホワイト:バトルものでいうと、『Fate/strange Fake』(以下、『Fake』)が光っていたと思います。原作を相当圧縮してアニメ化しているらしいんですが、シリーズをほとんど知らない私でも楽しめる作りになっていたところに脚本・構成の手腕を感じました。

徳田:僕も内容はぜんぜん理解できなかったんですが、めちゃくちゃおもしろくて『HUNTER×HUNTER』の連載再開を思い出すんですよ。数年ぶりにやっと再開したと思ったら、知らないやつと知らないやつが知らない念能力で闘ってるの。

舞風:(笑)。

徳田:でもめちゃくちゃおもしろい。それと同じ良さが『Fake』にもあって、知らないサーヴァントと知らないサーヴァントが知らない聖杯戦争で闘っているんだけど、バトルものとして面白い展開を連続させられればそれでいいんだと。

舞風:僕はちょうど高校生の頃に『Fate/stay night [Heaven's Feel]』の映画が公開されて、大学生になったあたりで完結した世代なので、『Fate/Grand Order』の流行りもあって周りにも『Fate』が好きな人は多かったんですよね。なので出てくる英霊もそれなりに知ってはいました。聖杯戦争が二つあるという内容は新鮮でしたが、それでもギリギリ聖杯戦争のルールに乗っかってるというような無法だけれどまとまりはある構成は面白かったです。あと、全員ニコニコで手を繋いでるEDが嘘すぎて良かった(笑)。

クコ:キャラクターがどういう悩みを抱えているのかさえ把握できていれば物語の理屈がいまいち分からなくても楽しめる作りになっていましたよね。

徳田:てか沙条綾香ちゃんが大好きなのと、ずっと前から思ってるんですけど、花澤香菜さんってダウナーな声のほうがいいですよね。

ホワイト:激しく同意です。

徳田:同じ理由で『勇者パーティーにかわいい子がいたので、告白してみた。』もちょっと好き。異世界系はあいかわらず大量発生でしたがどうでしたか?

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クコ:『貴族転生 〜恵まれた生まれから最強の力を得る〜』は良かったですね。CMに入るときにキャッチコピーが出るんですが、そこでも「規格外のチートスキルとあふれる知性を持つ最強貴族」みたいなことが言われて、とにかく主人公が何をやっても褒められていて笑えました。

徳田:2分に1回くらい「さすがでございます」とか言われてますよね(笑)。俺TUEEE的快楽の中でも最高レベルだったと思います。

舞風:異世界系では『勇者パーティを追い出された器用貧乏』(以下、『器用貧乏』)が好きでした。全体的にリソース管理がしっかりしていたなと。バトルシーンでは割り切ってCGを使って、見せ場でも日常シーンでも画面が崩れることはなく。あと、追放系から俺TUEEE系にストーリーが切り替わる流れをとてもシステマチックに展開していたのが面白かったですね。

クコ:修行パートで引き算をしながら魔法を打つ部分とか、魔法の使用における計算処理を冒険者に求めるのはなろう系には珍しいケレン味があって良かったです。

徳田:『器用貧乏』を観ていて思ったのですが、「基礎能力の応用」で勝つのが一番アツいみたいな美学ありませんか? 『フリーレン』のゾルトラーク(一般攻撃魔法)もそうですよね。

舞風:『ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~』の能力もそれに近いですね。

徳田:たしかに。『ヘルモード』はモンスターのCGがかわいくて好き。

舞風:いうほど無双してはいないものの、ちょうどストレスがない作品でいい塩梅でした。鳥と会話するシーンで突然画面分割が始まったりしたのも面白かったですね。『CITY THE ANIMATION』を思い出します。反対に『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録』(以下、『勇者刑』)は映像がとてもリッチだった反面、魔王現象を倒すアクションシーンが長めで少しサスペンスが強すぎるかな、と感じました。テオリッタちゃんはかわいかったですけどね。

徳田:テオリッタちゃんさぁ……、うるさくない?

舞風:いや(笑)、あの世界観、あの画面、あの色合いでテオリッタちゃんだけぴょんぴょんしている対比が良くて。

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