在日コリアンの“今”を描く『トロフィー』7月公開 キャストに井浦新、市川実和子、笠松将ら

恒那、井浦新、市川実和子、ちすん、笠松将が出演する孫明雅監督の長編デビュー作『トロフィー』が、7月10日よりテアトル新宿ほかで全国公開されることが決定した。
K2 Pictures製作、分福企画による本作は、在日コリアンのひとつの“今”を描いたオリジナルストーリー。是枝裕和監督率いる制作会社「分福」に所属し、是枝監督の『ベイビー・ブローカー』や西川美和監督の『すばらしき世界』で監督助手を務めた孫の長編デビュー作となる。監督自身も在日コリアン3世であり、朝鮮学校に通っていた。その経験や葛藤の記憶を出発点に、朝鮮学校に通う少女・ソヒの視点から、家族や友人との関係、そして自らのルーツと向き合う日常を描き出した。
「あなたの中にある爆弾を作品にしてみたら?」という西川監督からの言葉をきっかけに、本作の制作を決意した孫監督は、「この作品を通じて多くの方々に、学校に通う子ども達が置かれている状況を知ってもらいたい」という強い思いを物語に込めた。
主人公は在日コリアンの14歳の少女・ソヒ。朝鮮学校に通い、部活で朝鮮舞踊に打ち込む日々を送っている。ある日、日本学校との交流会で日本人の未来とK-POP好きという共通点で仲良くなり、ソヒは少しずつ外の世界と繋がりを持っていく。そんな中、ふたりは推しのK-POPアイドルのライブチケット代を稼ぐために、ソヒの家にある不用品をフリマサイトで売ることに。そこで意外にも高値で売れたのは、朝鮮学校の校長である父・サンジュが持っていた一枚の北朝鮮のCDだった。それに味をしめたソヒたちは、サンジュが祖国・北朝鮮から授与された“勲章”までも売ってしまう。
繊細でありつつ、強いまなざしを持つ主人公・ソヒを演じるのは、新人の恒那。250人のオーディションから選ばれ、本作が映画初主演となる。自身も在日コリアンのルーツを持つ中で、外の社会と出会いながら、分かり合えない父、ルーツへの戸惑い、そして思春期の揺れる心と向き合っていく少女の姿を体現した。
本作を構成する重要な要素のひとつが“朝鮮舞踊”。ダンスやバレエなど、これまで踊りを一度も習ったことがなかった恒那は、プロによる指導の元、1年にわたる稽古を重ねて撮影に挑んだ。恒那は「この新しい経験が自分の成長にもつながった」と語っている。
主人公ソヒの父・サンジュを演じるのは井浦。資金繰りの厳しい朝鮮学校の校長であるサンジュは、学校を守らなければいけない立場であり、ひとりの父親として家族を支えなければならない。祖国や学校に対する価値観を娘のソヒと分かり合えないことに割り切れない思いを抱えている。
監督からの出演オファーの手紙を読み終えたとき「自分ができる役割を果たしたいという気持ちが生まれた」という井浦。是枝監督の『ワンダフルライフ』で俳優としてのキャリアのスタートさせた井浦は、そんな是枝監督のもとで映画づくりを学んだ孫監督による本作について「孫監督らしい真新しい風が吹いていて、みんなで“今”にチャレンジしていたと思います」と語っている。
ソヒの母・ミリョンを演じるのは市川。「率直で素直な孫監督の誠実さに支えられながら、安心して作品に向き合うことができた」という市川が体現するのは、仕事に家事に追われながらも、家族を支え、日々を懸命に生きる母の姿。市川は「思春期のきらめきや、ぐちゃぐちゃとした感情、狡さや純粋さまでもが丁寧に描かれていて、なんて健気で愛おしい物語なんだろうと心を掴まれた」と、本作への思いを寄せている。
また、朝鮮舞踊部の先生役をちすんが演じる。自身も朝鮮学校出身で小学4年から9年間、朝鮮舞踊に青春を捧げてきたちすんは、オファーを受けて「おこがましくも、これは私にしかできないんじゃないか!」と語り、舞踊経験者だからこそできる、厳しくも暖かく舞踊部員を指導する先生を演じあげた。
そして朝鮮学校の担任・ホン先生役には笠松が決定。朝鮮語を話すシーンも多い中で、ホン先生役を演じ上げた笠松は、「孫明雅監督の初作品でご一緒できてとても光栄でした」とコメントを寄せている。
あわせて公開された特報映像は、主人公・ソヒ(恒那)が鏡に向かってあどけない表情を見せるシーンから始まる。そこから、朝鮮学校、朝鮮舞踊、そして好きなK-POPアイドルなど、思春期のソヒの日常の断片やソヒを取り巻く大人たちの姿が映し出されていく。
ティザービジュアルには、民族衣装のチョゴリに身を包み、静かなまなざしで遠くを見つめるソヒが捉えられている。このソヒの撮影は、少女たちの青春を切り取った写真を多く手がける写真家・石田真澄が担当した。
コメント
孫明雅(監督)
「あなたの中には爆弾がある。その爆弾を作品にしてみたら?」
朝鮮学校での日々に窮屈さを感じ、逃げるように日本社会へ足を踏み入れたという私の話を聞いて、西川美和監督はそう言いました。助手として師事していた頃の言葉がこの作品の出発点になり、自分の中で長く眠らせていた宿題と向き合うきっかけになりました。
しかし、デリケートなテーマゆえに、制作過程では協力してくださる方を募るのが難しく、最後まで走り切れるのか不安が尽きませんでした。それでも「この作品はやる意味がある」と支えて下さった方々がいらっしゃって、その方々のおかげでようやく形にすることが出来ました。感謝してもしきれません。
ここ10年で急速に朝鮮学校の数が減っている今、この作品を通じて多くの方々に、学校に通う子ども達の存在を知って頂けたらと思います。
小出大樹(プロデューサー)
孫監督とは、お互いが映画業界に入って間もない頃に出会い、この企画の提案を受けたときは8年ぶりの再会でした。
是枝監督や西川監督のもとで監督助手として研鑽を積むかたわらで書き綴った本作の話を初めて聞いた時、”朝鮮舞踊”がどういうものかは知りませんでしたが、孫監督の描きたい在日コリアンの少女の話に惹きつけられました。
250人を超える参加者のオーディションを経て出会った恒那さんには、朝鮮舞踊の先生たちとの練習を長期に渡って積み重ねてもらうなど、キャスト、スタッフの皆さんと、ひとつひとつ学びながら、また、この作品に協力してくださった多くの方々のサポートのおかげで、作り上げることが出来ました。劇場に足を運んで、楽しんでいただければと思います。
恒那(主演・ソヒ)

初めてのことばかりで不安や緊張もありましたが、周りの方々にたくさん支えていただき、いろいろな経験をさせていただきました。 その中でも大きな挑戦だったのが、初めての経験となった、劇中で踊る舞踊です。
最初は慣れない動きに苦戦して、自信を持って人前で踊ることができませんでしたが、練習を重ねていくうちに踊ることが楽しくなっていき、この新しい経験が自分の成長にもつながったと感じています。ぜひ舞踊のシーンにも注目して見ていただけたら嬉しいです。
また演技の面でも、ソヒという自分とは違う考え方を持つ役に、自分なりに向き合いながら演じました。ソヒが成長していく姿を感じていただけたら嬉しいです。
井浦新(ソヒの父・サンジュ)

台本と共に孫明雅監督から作品への想いと参加へのお誘いのお手紙をいただき、読み終えた時にはこの作品で自分ができる役割を果たしたいという気持ちが生まれていました。そして、孫監督の師である是枝裕和監督からも、この様にお手紙をもらったことがあるなぁと師弟の素敵な連なりを感じました。
撮影監督は山崎裕さん。是枝監督とのデビュー作『ワンダフルライフ』から何度もご一緒し、私の始まりからの軌跡を知って下さる深いご縁のある巨匠カメラマン。
初長編作品の孫監督が熟練のマエストロと向き合いながら切磋琢磨している現場は、懐かしさを少し感じながらも、やはり孫監督らしい真新しい風が吹いていて、みんなで“今”にチャレンジしていたと思います。
瑞々しく逞しく温かな作品。多くの方々に出逢っていただけたら幸いです。
市川実和子(ソヒの母・ミリョン)

台本をいただいてすぐ、迷いなくお話をお受けしました。思春期のきらめきや、ぐちゃぐちゃとした感情、狡さや純粋さまでもが丁寧に描かれていて、なんて健気で愛おしい物語なんだろうと心を掴まれました。
監督は、ご自身の書かれた台本そのままのように率直で素直な方で、違うときは違うと真っ直ぐに伝えてくださる。その誠実さに支えられながら、安心して作品に向き合うことができました。
私が演じたミリョンは、日々の雑務に追われながらも懸命に暮らすオンマです。綺麗事だけではない現実の中で、それでも生活を続けていく人間らしさを持った人物だと思っています。
一方で、「在日」という背景を演じることに、少し迷いもありました。朝鮮のことや歴史、その中にあるさまざまな感情を十分に理解していない自分が演じてよいのか、失礼ではないのかと、撮影中ずっと考えていました。
そういう時に思い出していたのが、子どもの頃の記憶です。隣に住んでいたお姉さんが着ていたチョゴリの制服があまりにも可愛くて、意味もわからないまま、ただ憧れていた記憶があります。
この作品には、そんな“隣の家の中”をそっと覗き見るような感覚があると思います。うまく言えないのですが、その距離感のまま、他の誰かの暮らしに触れていくところが、この映画の魅力なんじゃないかなと思っています。恒那ちゃんは、初めてお会いした時は消えてしまいそうなほど儚げな印象でしたが、知るほどに飾り気がなくて、芯のあるしっかりとした人柄で。そのギャップがなんとも魅力的でした。そんなどっしりとした彼女に支えられながら、家族のシーンでも自然な親子関係を築くことができたのではないかなと思っています。
ちすん(朝鮮舞踊部の先生)

私自身、小学4年から9年間、朝鮮舞踊に青春を捧げてきた1人です。
朝鮮舞踊の先生という役をいただいた時、おこがましくも、『これは私にしかできないんじゃないか!』と同時に、『いや、だけどずいぶんブランクがある、大丈夫かな』という不安も抱きました。
しかし舞踊部の子達と久しぶりに基礎練習をした時、体がしっかりと覚えていました。体が答えてくれました。
あ、私には舞踊というものがしっかりと体の中に刻み込まれているとこの時確信しました。
ただ、私が学生の時とは時代は変わり、環境もだいぶ変わりました。だけど、いつの時代も、何かに悩み、傷つき、苛立ち、色んなことを感じながら生きていくのは、普遍的なものであるとも感じています。
この令和の時代に朝鮮学校に通う子供、そして通わす親、登場人物それぞれの人生をぜひ覗いてみてください。
笠松将(ホン先生)

孫明雅監督の初作品でご一緒できてとても光栄でした。
撮影が終わったあと、86歳になられる撮影監督の山崎裕さんに言われた「また一緒にやりましょう」という言葉と、握手をした時の手の感触が忘れられません。
■公開情報
『トロフィー』
7月10日(金)テアトル新宿ほか順次公開
出演:恒那、ちすん、笠松将、市川実和子、井浦新
監督・脚本:孫明雅
プロデューサー:小出大樹
製作:紀伊宗之
企画:分福
撮影:山崎裕
音楽:Yonrimog
制作プロダクション:K2 Pictures Production
製作・配給:K2 Pictures
©2026 K2Pictures
公式サイト:https://stg.k2pic.com/film/trophy
公式X(旧Twitter):@trophy_film_710
公式Instagram:@trophy_film_710

























