『ばけばけ』出産と結婚描写は“直球”でもよかった? ふじきみつ彦らしい“螺旋”的展開

これだったら、トキは最初から外国人と結婚すると日本人ではなくなると知っていたので正式に結婚をしないでいた、というほうがわかりやすかったのではと思うのだが……。そこは史実に沿っているのだろうか。モデルのセツと小泉八雲の関わりがとっても気になる。彼らは何を考えて結婚したのだろう。単純に相性がよくてラブラブだったということでもなく、生きるためのいい意味での打算みたいなものはあったのではないかと筆者は想像してしまう。
妊娠がわかったとき、フミが「よかったねえ」と心から言う姿からも、子さえできればというニュアンスを感じてしまうのだ。ひじょうに斜めからの見方であるかもしれないけれど。

実は、そうなってしまわないように、ちゃんと脚本は書かれている。ヘブンがまだトキの妊娠を知らないときに散歩に誘って、「ワタシ、キメル、シマシタ、ワタシ、ニホンニ……」と言う(第109話)、そのあとはおそらく「ニホンニイマス、ズット」というようなものだったのだろう。でも、「ニホンニイマス」とはっきり言ったあと、子供ができたことをトキから聞くという、当たり前の順番通りの脚本を書かないところが『ばけばけ』のよさだ。
そのあとトキの体調が悪くなり、ヘブンが慌てて病院に行こうとしてはじめてトキの妊娠を知る、そのあっちゃこっちゃ言ったり来たりしたひと盛り上がりのために、「ワタシ、ニホンニ……」と語尾を濁しているのだろう。
ところがそのせいで、ふたりの愛情の確かさが強調されたというよりも、子どもができたから正式に結婚することを考えたようにも見えてしまう余地が生まれてしまう。いや、そんなの全然、理解できるじゃないかという賢明な視聴者もたくさんいるだろう。だが筆者は仕事として、ただのひとりも取りこぼさない表現とは何かを追求するというスタンスでドラマを観ている。筆者自身は『ばけばけ』の斜に構えた感じが好きだ。でもここは螺旋階段のようにぐるぐるしないで、誰もがすんなりわかる描き方でも良かったのではないかと思った。いずれにしても、昔といまでは結婚という概念がかなり違っていて、現代の価値観では測れないだろう。
参照
※ https://realsound.jp/movie/2026/03/post-2326333.html
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK





















