『田鎖ブラザーズ』渡辺真起子の存在感に息を呑む 秦野は遺族の傷を利用する“敵”なのか

「なんかゾワッとしませんでした? 全部見透かされているみたいで」
金曜ドラマ『田鎖ブラザーズ』(TBS系)第6話で登場した福祉健康課の相談支援係の秦野小夜子(渡辺真起子)の印象を、宮藤(中条あやみ)はそう語った。きっと多くの視聴者も、その独特な雰囲気に息を呑んだはずだ。人は自分を理解してくれる誰かを求めながらも、あまりにも解像度の高い分析を突きつけられると少しの恐怖を抱く。それは自分の最も弱いところを握られているような、そんな不安に駆られるからだ。
秦野が呼び起こした“理解されたかった7歳の真”

しかし、そんな秦野を真(岡田将生)はまた違う感覚で見つめていたように思う。宮藤が「お母さんってどんな人ですか?」とたずねたとき、真は「何やってもバレる。嘘ついても、なんか隠してもなんでも。盗聴器でもつけてたんじゃないかな」と答えた。“全部見透かされている”という感覚は、真にとって母を連想させるものだったのではないか。そう思うと、真が秦野のもとへ向かっていったのは、あの日に閉じ込められた7歳の少年が母を求めていくのと変わらないように思えた。
第6話は、真の心を覆っていた壁が、秦野の投げかける言葉によってガラガラと崩れていくような回だった。わずか7歳で両親が惨殺された姿を目の当たりにし、その犯人を追うために必死に生きてきた。弟の稔(染谷将太)と支え合ってきたとはいえ、弟のことも守らなければと食いしばってきた人生だった。
「もしあの事件が起きなかったら、今頃何をしていたか」そんな質問にもいつも「さあ、考えたこともない」とはぐらかしていた真。だが、もちろん真にも夢はあったのだ。実の弟にも明かさなかった、ささやかな夢が。でも、それを心の奥深くに埋めて刑事になった。すべては犯人を捕まえるため。そんな「もしも」を口にする人生など、自分には許されていないと言わんばかりに。

そんな真も、母の“見透かす力”を受け継いでいたように思う。それゆえに、街なかでも偶然目に留まった誰かの危機を察知してしまう。だからこそ、人々の興味関心の移ろいにも敏感だったのだろう。両親の殺人事件直後は、みんな自分たちに注目していた。警察も、マスコミも、周囲の人たちも気にかけてくれた。しかし、時間が経つほどその熱は冷めていく。同窓会に行けば事件の話になるが、それもその場だけ。会が終われば、また何事もなかったかのようにみんな日常へと戻っていく。自分だけが、ずっとあの日あのときに取り残されたままだった。
周囲の刑事が、交通事故に見せかけた殺人事件について宇野(山本浩司)の「復讐だ」と沸き立つ場面でも「3年経って?」と冷静に状況を観察することができる。秦野のところに宇野だけでなく、前回の殺人を自白した成田の母(中島ひろ子)が訪れていたことも、すぐに気づいた。でも、それを報告できなかったのは、秦野の「忘れられていく遺族の痛み、わかりますよね?」という言葉が、真の心の壁に大きなヒビを入れたからだろう。この人なら、この壁の奥に閉じ込めてきた本来の自分を見つけてくれるのではないか――そんな本能的な直感があったのかもしれない。






















