『タツキ先生』は完璧なヒーローではない 不完全な人間だからこそ説かれるチームの大切さ

『タツキ先生』は“完璧”なヒーローではない

 タツキ(町田啓太)は完全無欠のヒーローではない。三雲(江口洋介)がタツキに休職を命じた『タツキ先生は甘すぎる!』(日本テレビ系)第7話は、そのことを象徴とするエピソードだった。

 しずく(松本穂香)に背中を押され、フリースクール「ユカナイ」に元妻・優(比嘉愛未)を招いたタツキ。息子の蒼空(山岸想)と会って話がしたいというタツキの要望を、優は拒絶することなく受け止めた。

 一方で、タツキが追い詰めてしまった結果、蒼空は現在も部屋に閉じこもりがちで学校にも行けていない現状がある。優からしてみれば、今のタツキはそんな自分の子供を放置して、他人の子供に構っているように見えなくもないのではないか。帰り際、タツキに放った「大変そうね」という言葉から優の複雑な感情が伝わってきた。

 実際、タツキは蒼空のことが気になりつつも、すぐ自分のことを突然“パパ”と呼ぶようになった小学3年生の海音(池村碧彩)に意識を向けてしまう。タツキをめぐって友達とも喧嘩になるなど、海音の変化をスタッフたちも問題視していた。そこで、タツキは三雲にアドバイスされ、“ボタンアート”で海音の感情を探ることに。

 自分や家族、周りの人を色とりどりのボタンで、紙の上に表現するボタンアート。海音は「ユカナイ」の仲間たちを自由に躍動するボタンで表現した一方で、家族のことはきっちり整列したボタンで表した。直後、「ユカナイ」のフリーマーケットで賑わう一同をよそに海音が全国算数スクールに向けて勉強していたところ、海音の父・哲生(吉沢悠)がやってくる。細かい計算ミスをした海音に対し、哲生が「なんでミスしたの?」と優しく詰め寄る様子が引っかかったタツキ。同じくその様子を見ていたしずくも、教育虐待の可能性を示唆するのだった。

 教育虐待とは、親が子供の意思を無視して勉強や習い事を強制し、思うような結果が出なければ、身体的あるいは精神的な苦痛を与えること。通常の虐待と異なるのは、「教育のため、ひいては子供のため」という大義名分が隠れ蓑になりやすく、親自身も自分が虐待をしていることにより気づきにくい点だ。特に海音は算数の学力が人よりも秀でているため、哲生がその特技を伸ばしてあげたいと思うのも分からなくはない。ただ、海音がタツキに語ったように、「(問題が解けるまで)ご飯ないよ」と脅すのは明らかに教育虐待の疑いがある。

 タツキはそんな海音を心配するあまり、「逆転移」に陥ってしまう。臨床の現場でも使われる言葉で、患者がカウンセラーや医師などに対して抱く“特別な感情”を「転移」とい
い、その逆を「逆転移」という。特別な感情には、愛情や尊敬、親しみなどのポジティブな感情もあれば、怒りや憎しみ、不信感といったネガティブな感情も含まれるが、タツキの場合は前者だろう。海音と連絡先を交換して、夜遅くまでメッセージのやりとりを続けたり、哲生から海音を無理やり引き離そうとしたりと、まるで本当の父親かのようなタツキの言動は明らかに業務の範疇を超えていた。

 支援する側もされる側も人間である以上、転移・逆転移が生じるのはごく自然なことであり、それ自体は責められるものではない。タツキとしずくが海音への関わり方をめぐってぶつかるのも、人間同士だから仕方がないこと。そこに瑠美(藤本美貴)が介入して喧嘩を収めたように、大事なのは第三者の存在だ。このエピソードは、チーム支援の重要性も教えてくれる。三雲がタツキに「しばらく休め」と命じたのも、冷静さを取り戻すためなのだろう。

 一方、蒼空が突如タツキに会ってもいいと言い出し、久しぶりに親子3人が対面することになった。過去のことを謝罪するタツキに対し、「もう終わったんだって、全部。あんたのせいで」と怒りをぶつける蒼空。そんな中、タツキのもとにしずくから海音がアトリエに入ったまま、出てこなくなったという連絡が入る。「何があってもそばにいる」と約束してくれたはずのタツキが急にいなくなったことで、海音は大きな不安に苛まれたのだろう。それこそが、転移・逆転移の問題点だ。支援する側とされる側の境界線が曖昧になり、親密になればなるほど、相手の言動が期待と違った場合に「裏切られた、見捨てられた」という気持ちが引き起こりやすくなる。

 今、タツキの目の前には向き合うべき自分の子供、電話の向こうには自分の助けを求める子供がいる。さしあたりどちらの手を取るべきかという難しい選択を前に、タツキはどのような判断を下すのだろうか。

■放送情報
『タツキ先生は甘すぎる!』
日本テレビ系にて、毎週土曜21:00〜放送
出演:町田啓太、松本穂香、藤本美貴、寺田心、三遊亭好楽、比嘉愛未、江口洋介
脚本:徳尾浩司
演出:鈴木勇馬、松下敏也、苗代祐史
音楽:得田真裕
主題歌:福山雅治「拍手喝采」(アミューズ/Polydor Records)
フリースクール監修:石井しこう
アートセラピー監修:浜端望美
企画協力:前田志門
プロデューサー:岩崎秀紀、秋元孝之、大護彰子
チーフプロデューサー:荻野哲弘
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/tatsuki/
公式X(旧Twitter):https://x.com/tatsuki_ntv
公式Instagram:https://www.instagram.com/tatsuki_ntv
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@tatsuki_ntv

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