『風、薫る』が問う女性を縛る“若さと美”の描き方 遊び心を織り交ぜる制作陣の余裕も

『風、薫る』が問う“若さと美”の描き方

 仲間由紀恵の華や明瞭な演技がNHK連続テレビ小説『風、薫る』第8週「夕映え」(演出:佐々木善春)を牽引した。

 りん(見上愛)にとって2人目の担当患者は侯爵夫人・千佳子(仲間由紀恵)。乳がんで入院してきた千佳子をめぐって、帝都医科大学附属病院の幹部たちの陰謀にりんは巻き込まれる。

 千佳子は気難しく、入院するなり退院するとわがままを言う。このまま出ていかれたら病院の評判に関わる。手を焼いた院長(筒井道隆)たちは、見習いのりんを看護の担当にすることで、万が一、千佳子が出ていった場合、その理由を、りんの看護が悪かったことにしようと考える。さらにそのまま養成所の存続をストップさせようと目論んでいた。

 病院での研修を成功させて第2期募集も行いたいバーンズ先生(エマ・ハワード)は、院長たちの思惑を悟り、りんが千佳子の看護をすることを断ろうとする。だが、直美(上坂樹里)の助言で、考えを変える。りんは千佳子と徐々に心を通わせていく。

 患者とどう接するかが、第8週のポイント。患者の気持ちを察して、受け入れることが大事といっても、表面的に「わかる」と言っても、わかるわけがない。これは患者と看護婦との関係のみならず、日常の他者とのコミュニケーションでもぶつかる問題だ。

 りんと直美は、他人同士、互いのことがわかるわけがないという前提に立ったうえで、そこからどうするという課題にそれぞれのやり方で向き合っていく。直美は、わからないことを逆手にとって「嘘」をつく。患者の希望を叶えるために、藤田(坂口涼太郎)を嘘で丸め込んでいく。単純で乗せられやすい藤田にお世辞を言って気分をよくさせ、願いを聞いてもらう。直美の若さやかわいさを利用したうえ、患者たちまで協力させる手口は鮮やかで小気味いいほどだ。それを看病婦のフユ(猫背椿)に「ずるい女」とそしられても「ずる賢い女」だと言い直すしたたかさを直美は持っている。

 一方りんは、ひたすら誠実に千佳子に接する。りんは最初の担当患者・園部(野添義弘)といい関係を築きたかったが、バーンズから、看護では仲良くする必要はないと釘を刺されている。それはわかったうえで、患者が家族や友人に言えない本音を吐ける存在になろうと努力を始はじめる。幸い、千佳子とは、武家の出同士という共通点もあり、園部のときの反省も手伝って、コミュニケーションがとれるようになっていく。

 女性の人生双六で一緒に遊ぶうち、千佳子がなぜわがままを言うのか、それは病気で変わってしまった自分を夫や息子にどう思われるか不安であることがわかる。美しく誇り高い妻であり母であった自分が病気になったことで、彼らからの愛情が損なわれるのではないかという恐れを抱いていた。そのせいで終始不機嫌だったのだ。

 りんは、夫・元彦(谷田歩)から千佳子に変わらない愛情を伝えるように仕向ける。千佳子が隠したい彼女の弱音をすべて話すわけにはいかないから、千佳子と元彦の祝言の日の思い出(サブタイトルにもなっている「夕映え」が美しかったこと)を何気ないおしゃべりのように話すことで、元彦に千佳子との愛情が変わっていないという自覚を芽生えさせた。千佳子は変わらない夫の愛を実感し、手術を受けることにする。

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