“映画俳優”大西信満が朝ドラ『ばけばけ』で放つ異彩 寡黙でも際立つ“車夫”永見剣造

“映画俳優”大西信満が朝ドラで放つ異彩

 とはいえ、剣造の出番は限られている。ヘブンの通勤や、松野家の者の移動をサポートするのが彼の仕事。だから自然と、登場するシーンは限定されてくる。そのうえ不器用で寡黙なキャラクターなのだから、当然ながら口にするセリフも限られたものになっている。劇中でもっとも口数の少ないキャラクターだと記したとおりだ。けれどもこれを演じる大西は、ごくごく限られたチャンスの中で、いまのこの剣造という人物像を立ち上げてみせている。剣造は『ばけばけ』の世界の中で息づいているのだ。

 大西信満という俳優に対してこれまでは、佇まいで魅せる映画俳優だというイメージを持ってきた。お茶の間で観るテレビドラマとは違い、映画は暗闇の中で一人ひとりの観客と対峙することになる。私が言うところの「映画俳優」とは、この環境に耐え得る存在のこと。彼らは観客に対してときに苦痛を与え、ときに快楽をもたらす。『キャタピラー』(2010年)をはじめとする若松孝二監督の作品や、瀬々敬久監督がインディペンデント・シーンで撮り上げた『菊とギロチン』(2018年)、映画愛を高らかに謳う『止められるか、俺たちを』(2018年)、そして主演作『さよなら渓谷』(2013年)や『痴人の愛』(2024年)などで、私はスクリーンの中の大西と対峙してきた。そのどれもが忘れ難い体験である。

 そんな映画俳優の大西が、まさかの「朝ドラ」に登場。はじめて知ったときは、かなり驚いたものだ。けれども彼が劇中に姿を現すと、画面がぐっと引き締まる。作品の質感が少し変わる(これは一部の映画ファンにとっての錯覚かもしれない)。でも口を開けば出てくる「不器用ですけん」の一言も、トキやヘブンを前にのぞかせる表情も、どれもチャーミング。これらが絶妙に絡み合い、愛さずにはいられない人物像を構成する要素となっている。これからも『ばけばけ』の心強いファミリーのひとりとして、“永見剣造=大西信満”には駆け回っていただきたい。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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