『ラムネモンキー』マチルダ役で異彩を放つ 木竜麻生はなぜ“忘れられない俳優”なのか

木竜麻生、『ラムネモンキー』で異彩を放つ

 反町隆史、大森南朋、津田健次郎が主演を務め、生き方迷子になった51歳の男性3人組がカンフー映画に魂を焦がした中学時代の記憶をたどりながら、「教師失踪事件」の謎に迫る『ラムネモンキー』(フジテレビ)が好評だ。

 3人の憧れの的で、謎の失踪を遂げた映画研究部顧問の女性教師、通称「マチルダ」を演じる木竜麻生のミステリアスな演技が、絶妙なアクセントになっている。

 2025年は『いつか、無重力の宙で』(NHK総合)や『秒速5センチメートル』をはじめ、ドラマ2作、映画4作と、主演作や話題の出演作が数多くリリースされた木竜。今年最も注目すべき俳優のひとりといえるだろう。本稿では、そんな彼女のキャリアをふりかえりつつ、俳優としての魅力に迫ってみたい。

 木竜は現在31歳。紋切り型の言葉を用いてしまえば、「遅咲き」「スロースターター」と言われるのかもしれない。しかし、どんな作品でも、どんな端役でも、「なんかあの人、忘れられないんだよな」と思わされる、稀有な俳優だ。文学座や俳優座の出身ではないのだけれど、そうした名門劇団出身者特有の、いわゆる「下積みと鍛錬を重ねた俳優」の空気感を纏っている。そしてなぜか、昭和の香りもする。

 14歳で原宿でスカウトされて芸能界入り。16歳のときに、 DENSO「地球がずっと輝くために、クルマがずっと愛されるために」篇でCMデビューを果たした。スクリーンデビューは、『まほろ駅前狂騒曲』(2014年)での喫茶店のウエイトレス役。顔がほとんど映らず、台詞は「いらっしゃいませ」「ご注文は」「ありがとうございました」の3つだけ。それでも、「木竜麻生の声」だとわかる。彼女は声においても「記憶に残る声音」をしている。俳優としては大きな強みだ。

 その後、重松清の同名小説を映画化した『アゲイン 28年目の甲子園』(2015年)、多部未華子と綾野剛が主演した恋愛映画『ピース オブ ケイク』(2015年)、テレビのワイドショーの現場の悲喜交々を描いた『グッドモーニングショー』(2016年)などに端役として出演するも、台詞は一言二言あればいいほうだった。

 一方で、日本映画大学の卒業制作作品『深爪』(2016年)をはじめ、インディペンデント系映画への主演・出演を重ねていく。のちに複数のインタビューで木竜は、「オーディションでもオファーでも、自分自身が面白いと思えるものを選んでいる」と語っているが、2016年ごろからの出演作は確実に、自らの意思で選んでいることがうかがえる作品群となっている。所属事務所が、本人の意思を尊重する「売り方」をしてきたのだと察せられる。

 2018年に公開され、大正時代に人権と自由を求めて足掻く女性力士の姿を描いた『菊とギロチン』(2018年)では主人公・花菊ともよを体当たりで演じた。約300名の候補から木竜を主役に選んだ理由を、瀬々敬久監督は「どこか懐かしい顔立ち。少し不器用そうだけど、確固たる芯があった」と語った(※1)。

 また同年には、長男の自殺で崩壊した家族の再生を描いた『鈴木家の嘘』で準主役をつとめる。精神が壊れてしまった母のために兄の死を伏せて嘘をつくうちに、自らも追い詰められていく長女役を熱演した。木竜はこうした、「一見“普通”なのに、肚に何かを抱えている」役がぴたりとハマる。

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