『ばけばけ』はなぜ“花”を惨めな存在として描いたのか 表裏一体の幸福と不幸

『ばけばけ』表裏一体の幸福と不幸

 ネットを眺めてみると、庄田がお金で解決しようとしてしまった、サワの自立したい気持ちを優先していなかった、自分の力で長屋を出る意思を貫いたサワを支持するという声もあった。ほんとうに人それぞれに感じることがあるものだ。ドラマの登場人物の言動を見ていろいろな意見が交わされることはいいことだと思う。

 サワの物語はじっくり描いてほしかった。1回断っても、トキならおせっかいで考え直すように言いそうだし、サワと庄田でもうちょっと最適解をじっくり考えてほしかった。サワもあまり健康そうでないお母さんのことをもっと考えて、ミートパイやお菓子をお母さんに持って帰るという描写などがあってほしかった。母親の世話をしながら苦学している描写があれば、ドラマにもっと深みが出たと思うのだ。

 いろいろな感情がわく。花束は様々な感情の束のようだ。例えば名も知らぬ野の花の価値を大事にする人もいれば(たぶんヘブンはそう)、やっぱり薔薇や蘭のような高級なものを好む人もいるだろう。サワの場合のようにせっかく持ってきた花が場違いで、手に持つのがためらわれることもある。トキが、「こげなもん持ってきちゃった」「ごめん」と謝る混乱は、裕福になったトキがあえて野の花(サワがトキの家に持ってきたような)であることと、それが先走りだったこと。ことごとくタイミングが合っていない。よかれと思ったことが裏目に出て、悲しくて惨めでしおれた気持ちが、貧しい描写以上に伝わってくる。こんな負け人生に誰がした、という恨み節。それをサワは「トキのせい」にする。トキはそれを抱きしめて受け止めて、共に泣く。

 そういえば、『とと姉ちゃん』(2016年度前期)の主題歌、宇多田ヒカルの「花束を君に」も、涙色の花束で、花束の両義性を歌っていた。きれいは汚い、汚いはきれい。幸福と不幸。ものごとはどちらにもあっけなく転じてしまう。いいふうに考えれば、幸せを選択することも可能なのだ。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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