波瑠×筒井真理子の涙なしには観られない親子の愛 『フェイクマミー』薫の最後の親孝行

ベビーカーに乗っていた子どもが、やがては親の車椅子を押すようになる。『フェイクマミー』(TBS系)第8話では、薫(波瑠)の最後の親孝行が描かれた。
薫の母・聖子(筒井真理子)のガンが再発。本人の希望で入院から在宅医療に切り替え、薫は学校帰りのいろは(池村碧彩)を実家で預かることに。ニセママ計画に反対している聖子は自分を“おばあちゃん”と呼ぶいろはを「私はあなたのおばあちゃんじゃないでしょう」と冷たくあしらうが、ともに時間を過ごす中で少しずつ心が近づいていく。
ジーニアス留学制度の候補生の一人に選ばれるほど、学年でもトップクラスの成績を誇るいろはだが、通知表でも指摘されていたように整理整頓は少し苦手。そんないろはに玄関の靴は揃える、制服は脱いだらハンガーにかける等のルールを教え込み、厳しくしつけていく聖子。そのうち、いろはの学校での生活態度にも変化が現れる。同じように、基本的なマナーや礼儀は祖父母から教わったという人も多いのではないだろうか。

逆に祖父母側が孫から刺激を受けることも多い。母親が2人いるのはおかしいと思っていた聖子は、いろはの「なんでお母さんが2人いちゃいけないの?」という純粋な問いかけで新たな価値観に触れたようだ。それでも茉海恵(川栄李奈)への不信感は拭えなかった。むしろいろはのことがかわいくなればなるほど、その子の世話を他人に任せていることが理解できない。
聖子がニセママ計画に反対するのは、娘を犯罪者にしたくないからでもあるが、それだけではなかった。「子供を育てるためには、親は何かを差し出すべき」という価値観を持っている聖子からしてみれば、仕事を優先しつつ、違法とも言える手段を使ってまでいろはを希望の学校に入れた茉海恵は強欲で身勝手な母親。彼女の自己実現のためにいろははもちろん、薫も犠牲になっていると感じ、母親として娘を守ろうとしていたのだ。

しかし、実態は異なる。薫と茉海恵は、家庭環境を理由にいろはの夢が絶たれるのは納得できないという点で一致し、対等な関係を築いてきた。2人とも一番にいろはのことを考えていて、それは聖子が薫を大事に思う気持ちと変わらない。きっと聖子はいろいろなものを犠牲にして薫を育ててきたのだろう。だからこそ、今の薫がいるわけで、それ自体は否定されるべきものではない。一方で、その苦労を下の世代が引き継ぐ必要はないとも思うのだ。母親が自己実現を諦めることなく、子どもを育てられる道があるのなら、それを選ぶことに何の問題があるというのだろう。




















