『呪術廻戦』禪院直哉はなぜこんなに“愛されるのか” 彼が体現する呪術界と自己矛盾

『呪術廻戦』禪院直哉はなぜ“愛されるのか”

※以降、原作の内容に触れています。

 彼の中には、強烈なコンプレックスと、幼少期に刻まれた「最強」への憧憬が渦巻いている。

 それが、伏黒甚爾の存在だ。かつて「禪院家の落ちこぼれ」として虐げられていた甚爾に対し、幼い直哉だけはその異次元の強さを本能的に感じ取り、憧れを抱いた。本来、呪力を持たない甚爾は直哉の蔑視の対象になるはずだ。しかし、直哉の基準はシンプルで「強いか、弱いか」である。彼にとって甚爾は、五条と並ぶ“アッチ側”の人間であり、自分が目指すべき頂だった。

 彼は誰よりも禪院家の血統と地位に固執しているように見えて、実は「家の権威」そのもの以上に「圧倒的な個の強さ」に無意識的に焦がれている。にもかかわらず、彼自身の戦い方や思考回路は、皮肉にも彼が軽蔑する「禪院家的な古い因習」に縛られ続けているのだ。

 彼から目を離せないのは、彼が抱えるこの巨大な自己矛盾(呪い)が、時にはあまりにも痛々しく、そして人間くさいからではないだろうか。得物を持ち歩く呪術師がカッコ悪いと言うのに、自分も得物を戦いに持ち込んでしまうところや、地べたに這いつくばってもまだ抗おうとする執念や、狡猾さ。このどうしようもない人間くささが愛おしいのである。

 特にアニメ化においては、声優の遊佐浩二の圧倒的な演技と、術式「投射呪法」の表現が相乗効果を生み、単なる敵役としてではない、忘れがたい強烈な個性を発揮した。しかし、そんなただの“ドブカス”にとどまらない、“呪い”の体現者としての存在感をスクリーン、そして今後のアニメ放送で魅力に感じてほしい。

参照
※ https://jujutsukaisen.jp/news/20251125_01.php

■公開情報
『劇場版 呪術廻戦「渋谷事変 特別編集版」×「死滅回游 先行上映」』
全国公開中
キャスト:榎木淳弥、内田雄馬、瀬戸麻沙美、津田健次郎、木村昴、中村悠一、櫻井孝宏、浪川大輔、島﨑信長、諏訪部順一、緒方恵美
原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社ジャンプコミックス刊)
監督:御所園翔太
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
美術監督:東潤一
色彩設計:松島英子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:石川大輔(モンスターズエッグ)
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介、ACE
音楽:照井順政
音楽プロデューサー:小林健樹
音響監督:えびなやすのり
音響制作:dugout
制作:MAPPA
製作:東宝、集英社、MAPPA、サムザップ、MBS
配給:東宝
©︎芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
IMAX劇場、MX4D&4DX上映劇場一覧:https://theater.toho.co.jp/toho_theaterlist/shibuyashimetsu.html

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