『呪術廻戦』『チェンソーマン』ヒットの理由は? 『鬼滅の刃』とは違う“ハードコア路線”

『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』に『チェンソーマン レゼ篇』と、ジャンプアニメが世界規模の大ヒットを連発している2025年。11月7日に公開された『劇場版 呪術廻戦「渋谷事変 特別編集版」×「死滅回游 先行上映」』も初週から週末観客動員ランキング1位に輝き、快調なスタートダッシュを見せている。
しかしここで気になるのが、3作品のあいだにある作風の違いだ。とくに『鬼滅の刃』と『チェンソーマン』、『呪術廻戦』には、かなり大きな相違点があるように思われる。

『鬼滅の刃』について言えば、ファミリー層の支持が高いと指摘されることが多い作品だ。たとえば「いこーよファミリーラボ」が実施した「親子で観たい夏休み映画」のアンケート調査では、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が2025年6月~8月公開作品のうち2位の位置を占めていた。(※1)
また少々前のデータにはなるが、株式会社モニタスが2021年6月に発表した「モニタス アニメに関する調査」では、「性別/年代別にみるアニメの人気ランキングTOP3」で10代から70代まで全世代のトップ3に『鬼滅の刃』がランクインしていた。(※2)

なぜ『鬼滅の刃』が子どもから大人まで幅広い層に支持されるのかといえば、誰にでも伝わりやすい勧善懲悪をベースとした物語である点が大きい。人間を食い物にする鬼たちと、そんな鬼を狩るために組織された鬼殺隊という分かりやすい対立構図で、残虐非道な敵を倒すために命を燃やすというストーリーは性別も世代も関係なく共感できるからだ。
例外的に主人公の竈門炭治郎は、人間と鬼が分かり合う可能性を模索した人物で、胡蝶しのぶから「鬼と仲良くする夢」を託される場面もあった。しかし結局この方向性は作品全体としては、あまり前景化されてはいない。
それに対して『チェンソーマン』と『呪術廻戦』は、善と悪をはっきりと分けることができない世界を描いた作品と言える。『チェンソーマン』では公安対魔特異4課が鬼殺隊に対応しているが、『レゼ篇』が典型的にそうだったように、この組織は必ずしも正義の側として描かれていない。そもそも主人公のデンジからして、人間でありながら悪魔の力を持つという“どっちつかず”のキャラクターだ。

また『呪術廻戦』も、邪悪な呪霊を討伐していくという単純な勧善懲悪の物語ではない。呪霊と戦う呪術師たちの業界は、腐敗した権力者の巣窟となっており、主人公・虎杖悠仁は物語冒頭の時点で「秘匿死刑」の宣告を受けていた。
善と悪が判然としない物語は、ファミリー層向けとしてはハードルが高く、どちらかといえばコアなファン向けになることが多いもの。その上で疑問なのは、「なぜこの2作品は大ヒットを記録できたのか」ということだ。




















