細田守は一体何に挑んだのか 『果てしなきスカーレット』は“世界の現状”を問い続ける

『果てしなきスカーレット』が問うた“世界”

芦田愛菜の凄絶な叫び、亡き師へ届く役所広司の怪演

 スカーレットのキャラクター造形は、前作『竜とそばかすの姫』(2021年)のアバターキャラ“ベル”の流れを汲むようなディズニーアニメ風テイストだが、そんなヒロインが傷だらけ・泥まみれで荒野を旅する姿はインパクト絶大。これも、この制作チームだからこそ実現できたビジュアルと言える。また、ほぼ全編3DCGによるアニメーションも、異界感を引き立てつつ、2D作画アニメにはない独自の表現領域を見せつける。ちなみに2026年1月9日公開のSTUDIO4℃最新作『ALL YOU NEED IS KILL』も、3DCG表現に驚かされること請け合いの作品なので、ぜひセットで観てほしいところだ。

 満身創痍のスカーレットを演じる芦田愛菜の、喉から血を迸らせるかのような熱演も圧巻だ。プレスコで収録されたという彼女の凄絶な演技が、細田作品史上最もエモーショナルなクライマックスを現出させたと言っても過言ではない。そして、これでもかというほど憎々しい敵役クローディアスに扮する役所広司の、堂々たるシェイクスピア役者ぶりも見どころ。その迫力満点の見せ場は、天国にいる亡き師にも届くかと思うほどだ。

 観客に考えさせることが、すなわちエンターテインメントになる。その思考は作品を超えて、世界の現状に思いを馳せることにも否応なく繋がっていくだろう。それもまた「映画の力」であり、細田守監督が挑むべくして挑んだ「巨匠の領域」といえるかもしれない。

■公開情報
『果てしなきスカーレット』
全国公開中
出演:芦田愛菜、岡田将生、山路和弘、柄本時生、青木崇高、染谷将太、白山乃愛、白石加代子、吉田鋼太郎、斉藤由貴、松重豊、市村正親、役所広司
監督:細田守
配給:東宝、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©︎2025 スタジオ地図
公式サイト:https://scarlet-movie.jp/
公式X(旧Twitter):https://x.com/studio_chizu
公式Instagram:https://www.instagram.com/studio_chizu/
公式Facebook:https://www.facebook.com/studiochizu

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる