『シバのおきて』“エスパー犬”はフィクションではない? 『シバONE』編集部の団結に拍手

犬との良好な関係を結びながら、仕事と家族、はたまた人生をよりよく歩む秘訣まで学べるNHKドラマ10『シバのおきて〜われら犬バカ編集部〜』。くだらなくも柴犬への愛に溢れた企画で順調にファンを獲得していた『シバONE』だが、社長の御手洗(勝村政信)にとっては面白くない。
石森(飯豊まりえ)を呼びつけると「くだらない企画をやめろ」と追及し、さらに石森の念願だったサッカー雑誌編集部への異動もちらつかせる。一方その頃、相楽(大東駿介)たちは、福助が不意に落とし物を発見したことをきっかけに「予知能力があるのでは?」とにわかに盛り上がり、「噂のエスパー犬を追え!」特集を決行。御手洗が目を光らせる中、『シバONE』名物の“犬バカ”企画は無事進行するのだろうか。

福助は防災訓練のような格好をさせられた実験の最中、咄嗟に物が崩れ落ちて来るのを避けたり、亜衣(瀧内久美)と完全に意思が疎通できているような表情をする。そんな姿に大興奮の相楽には、またぞろ始まったと呆れ返りながらも頬をゆるませてしまうわけだが(もしかするとすでに相楽は視聴者の“愛されキャラ”になっているかもしれない)、実は“エスパー犬”は間違いでもないらしい。
2022年に全国の300人以上の犬の飼い主に対して行ったアンケート(※1)によれば、犬が飼い主の帰宅を察知すると回答したのは85.1%、愛犬が言葉を分かると答えた人はさらに多く87.8%だった。他にも、自身の愛犬だけの特殊能力として「地震予知」や「言葉をしゃべる」を主張する飼い主もいたそうだ。滑沢先生(松坂慶子)が自身のクリニックに通う飼い主と犬の不思議な体験を挙げたうえで「人間にはない第六感みたいなものがないとは言い切れない」と話し石森たちを驚かせたが、迷信だとあなどれないのである。

犬にはたしかに、予知能力のようなものがあるという。たとえばとある日本の高齢者養護施設で飼われていた雑種犬の文福は、お年寄りに死期が迫ると、顔をなめたり、体をこすりつけたりすることで「一人ではないよ」と安心させる行為を、誰に促されるともなく始め、“看取り犬(みとりいぬ)”と呼ばれたそうだ(※2)。犬は人間よりもずっと、周りを見て、気を配り、共感して生きている。
こうした目に見えない犬たちの力を生かし、可視化されづらい人の悩みや苦しみに寄り添うセラピードッグは、アメリカでは長く一般的な存在となっている。他方、日本では老人ホームや病院などでは定着しているが、アメリカほどの広がりはまだない。その意味では、舞台となる平成時代にすでに犬の持つ不思議な能力に目をつけていた『シバONE』はかなり先見の明がある設定であり、くだらない中にもきちんと犬たちの能力に向き合っている稀有な媒体なのかもしれない。

今週目を引いたのは、石森と清家(片桐はいり)が相楽を巧みにアシストする意外な姿だった。『シバONE』の企画を妨害すべく、御手洗は石森のかつての上司・島池(川島潤哉)を仲間に引き入れて裏工作を図っていた。そこで清家は、「部下に対してダメな上司は飼い主としてもダメなはず」という企画を立ち上げる。

そして御手洗と島池を言いくるめたうえ、“愛犬を困らせる悪徳飼い主”として雑誌に登場させたのだった。もちろん相楽も“ダメ上司&飼い主”の役をやらせるオチもついているが、卑怯な御手洗たちの鼻を見事明かすことに成功した。相楽と石森が、素直になれず憎まれ口を叩き合うラストシークエンスはいつもの編集部の光景ではあるものの、小競り合いを繰り返しながらも不器用な相楽を仲間として認めていることが垣間見えた。編集部がいつも以上に一致団結した瞬間に快哉を叫んだ第7回だった。
参照
※1. https://inunavi.plan-b.co.jp/column/dog_deta_nouryoku/
※2. https://www2.nhk.or.jp/archives/movies/?id=D0009051482_00000
■放送情報
ドラマ10『シバのおきて~われら犬バカ編集部~』
NHK総合にて、毎週火曜22:00~放送
出演:大東駿介、飯豊まりえ、片桐はいり、こがけん、篠原悠伸、やす、黒田大輔、水川かたまり、瀧内公美、勝村政信、松坂慶子ほか
声の出演:柄本時生、津田健次郎
原作:片野ゆか 『平成犬バカ編集部』
脚本:徳尾浩司
音楽:YOUR SONG IS GOOD
プロデューサー:内藤愼介(NHK エンタープライズ)
演出:笠浦友愛、木村隆文、加地源一郎、村田有里(NHK エンタープライズ)
制作統括:高橋練(NHK エンタープライズ)、渡邊悟(NHK)
写真提供=NHK






















