『冬のさ春のね』あらゆる角度から問われる“やさしさ” 小太郎&ゆきおの文菜との距離感

前回、風邪で寝込んだ文菜(杉咲花)のもとにお見舞いにやってきた山田(内堀太郎)は、文菜から「もう会うのをやめよう」と告げられる。その後、文菜が眠った後もしれっと部屋に居座っていた山田だったが、そこに今度は小太郎(岡山天音)が見舞いにやってくる。思いがけないかたちでの山田と小太郎の初対面から始まった、3月18日放送の『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系)第9話。よくよく考えてみれば、前回のラストからそのまま続くエピソードというのは、このドラマでは初めてのはずだ。
なにはともあれ、山田と小太郎のぎこちないやり取りは、思いがけない作用を生むことになる。山田から「美容師をしているんですね?」と訊ねられ、頷く小太郎。なるほど、山田は小太郎を文菜の彼氏だと勘違いしているわけだ。これまでまったく活かされる機会がなかったが、相関図上にはしっかりと記載されていた小太郎の職業=ゆきお(成田凌)と同じ美容師であるという点が、山田の勘違いと、両者のあいだに流れる空気のぎこちなさを強化していくのである。それはさながらコントのようでもある。

ここで肝心なのは、小太郎のほうも山田を文菜の彼氏だと勘違いしていることである。すでに文菜から関係の解消を告げられている山田はスッと部屋から出ていき、残った小太郎は目を覚ました文菜に対して急にカッコつけながら身を引くことを宣言する。結局のところ、文菜はいつも通り小太郎を呼び出したりするし、小太郎も自分のしていた勘違いに気が付くわけなのだが、おそらく2人の関係はこれ以上近付くこともないし、離れるべきでもない。前半30分をしっかり使って描かれた勘違いエピソードからは、文菜は何があってもひとりではないんだという小太郎の“やさしさ”――劇中の分類に従えば、“長い目で見た時のやさしさ”を見るためのものだったのだろう。

現在の文菜をめぐる3人の男たちのうちの2人が、ある意味で文菜との関係に明確な解を見出している一方で、肝心のゆきおはといえば、職場の同僚である紗枝(久保史緒里)と部屋で過ごしているわけで。椅子が届き、クリスマスの日に文菜とゆきおが一緒に買いに行った(第2話で描かれていた)ものだと聞いて真っ先に座る紗枝。彼女はゆきおに文菜と別れることをせがむわけでもなく、「好きな人には幸せでいてほしい」と言う。小太郎も文菜に対して同じ言葉を言っていたけれど、まるっきり違う言葉に聞こえる。これは男女の違いなのか、言う側の違いなのか、言う側と言われる側の関係性の違いなのか。

少なくとも、ゆきおは紗枝に対し、文菜と別れて彼女と付き合おうと考えていることを告げている。それでも待ち合わせのコインランドリーに現れたゆきおはいつも通り文菜を愛おしそうに眺める。まだ我々視聴者には、これまで文菜にとっての“やさしさ”の象徴であったはずの彼の内心というものが見えてはこない。それでもコインランドリーから出る2人の後ろ姿は、やはり第4話で描かれた二胡(栁俊太郎)との「別れるための最後のデート」の時の後ろ姿と重なるものがあった。
小説家で古着屋バイトの主人公・文菜は、過去の経験から恋人と真剣に向き合うことを避けていた。そんな文菜が自分の恋愛を見つめ直していく。演出には、映画監督の山下敦弘と山田卓司も参加している。
■放送情報
『冬のなんかさ、春のなんかね』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00~放送
出演:杉咲花、成田凌、岡山天音、水沢林太郎、野内まる、志田彩良、倉悠貴、栁俊太郎、細田佳央太、内堀太郎、林裕太、河井青葉、芹澤興人
脚本:今泉力哉
監督:今泉力哉、山下敦弘、山田卓司
音楽:ゲイリー芦屋
主題歌:Homecomings 「knit」(IRORI Records / PONY CANYON)
プロデューサー:大倉寛子、藤森真実、角田道明、山内遊
チーフプロデューサー:道坂忠久
制作協力:AX-ON、Lat-Lon
©日本テレビ
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