『ぼくたちん家』性的マイノリティを取り巻く社会の変化 玄一と索の恋模様は急速進展

『ぼくたちん家』玄一と索の恋模様が急速進展

 過去の行いを悔いていた玄一と鯉登がそれぞれの思いを打ち明けて、両思いだったことが発覚したのも束の間、突然、アパートに現れたのは、なんと逃亡中のともえ(麻生久美子)と元夫の仁(光石研)。親子のフリと3000万円の行方を知る人物が大集合してしまう。

 異色のメンバーが机を囲んで団欒する、なんとも奇妙な状況のなかで秘めていた思いを爆発させたのはほたるだった。母親と再会した瞬間には「謝ったって許さないから」とキーホルダーを投げつける。しかし、玄一や索がほたるの意見に同調してともえを責めると、「お母さんのこと悪く言わないでください」と咎める。ほたるを演じる白鳥玉季の絶妙な表情の変化によって、彼女の母親に対する屈折した感情がダイレクトに伝わってくる。

 横領して逃げている最中に、全国のご当地キーホルダー47個を集める小学生の頃の夢を思い出したともえ。だから、すべてを集めるまでは帰れないのだという。ほたるが思わず「マジでわかんないじゃん」とこぼすのも無理はない言い分だった。

 それでも、ほたるはともえに向かって「さっさと行って、帰ってきて」と口にする。好きなところも嫌いなところも両方ある母親。でも、理解できなくても、わからないままでも、それでも帰ってきてほしい。それは彼女がずっと隠していた素直な本心だったように思う。

 部屋で涙を流すほたるを、玄一は「今、わからなくていいよ。好きとか、嫌いとかも、決めなくていいと思う。焦らなくていいよ」と慰める。彼の人となりが表れた言葉は、ほたるが等身大に抱いた思いを受け止めながら、優しく寄り添うことができる柔らかさがある。

 物語の最後には、ついに玄一と索がお互い両思いであることを確かめ合う。特に索は、鯉登と玄一が昔のように親しくなっていくにつれて、どんどん嫉妬の感情があらわになっていく様子が印象的だった。鯉登が「パートナーと家を買った」と言うと、露骨に安心していた表情を浮かべており、玄一に惹かれる恋心を薄々、自覚していたのかもしれない。

 元々、この物語は恋と革命に燃える玄一が索に向かって「2人で家を買って“かすがい”にする」ことを宣言したことから始まった。最終話を迎える前に、2人が掲げた夢は果たして叶うのだろうか。

『ぼくたちん家』の画像

ぼくたちん家

現代に様々な偏見の中で生きる“社会のすみっこ”にいる人々が、愛と自由と居場所を求めて、明るくたくましく生き抜く姿を描くホーム&ラブコメディ。

■放送情報
『ぼくたちん家』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30~放送
出演:及川光博、手越祐也、白鳥玉季、田中直樹、渋谷凪咲、坂井真紀、光石研、麻生久美子
脚本:松本優紀、渋谷凪咲、田中直樹
演出:鯨岡弘識、北川瞳
インクルーシブプロデューサー:白川大介
チーフプロデューサー:松本京子
プロデューサー:河野英裕、西紀州、岡宅真由美
音楽:東川亜希子、神谷洵平
主題歌:「バームクーヘン」
制作協力:AX-ON
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/bokutachinchi/
公式X(旧Twitter):https://x.com/bokutachinchi
公式Instagram:https://www.instagram.com/bokutachinchi/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@bokutachinchi

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「リキャップ」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる