応援上映はなぜここまで浸透した? 『アイドリッシュセブン 劇場総集編』を機に振り返る

「推す」という行為は、いつからこんなにも私たちの日常に溶け込んだのだろう。
「推し活」という言葉が一般化し、多くの人が何かしらの“推し”を持つ時代。その熱量が最も顕著に表れるジャンルのひとつが、アイドル作品だろう。2025年秋、『キミとアイドルプリキュア♪』『アイカツ!×プリパラ THE MOVIE 出会いのキセキ!』『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』などのアイドルアニメが劇場やテレビを彩り、世代を超えてファンを魅了している。
興味深いのは、推し活ブームを迎えた今、ファンが推しと向き合う手段が多様化していることだ。SNSでの情報共有や概念コーデを活かしたファッション、聖地巡礼など、推しへの応援の形は、かつてテレビの前やスクリーンの前で見守ることが中心だった時代から、より能動的で双方向的な体験へと広がりを見せている。
その象徴が「応援上映」だろう。応援上映と聞くと、観客がコールを合わせ、ペンライトを振る熱気あふれる光景を思い浮かべるかもしれない。確かに初日や舞台挨拶付きの回では、お祭りのような一体感が味わえる。しかし実際の現場では、それだけではない光景が広がっている。
たとえば、筆者が足を運んだ都内劇場。『アイドリッシュセブン First BEAT! 劇場総集編』(2025年)応援上映では、平日夜の観客はおよそ15名。スーツ姿の人もいて、仕事帰りに駆けつけたのだろう。多くが1人で来場し、声を上げる人はほとんどいない。それでも観客は静かにペンライトを掲げ、推しの登場シーンに合わせて光を動かす。音のない声援がスクリーンに寄り添うその時間にも、確かな「応援」の形があった。
もちろん、作品の特性や上映回のタイミングによって、応援上映の雰囲気は大きく変わることはいうまでもない。一方で同様の光景は他作品でも平日を中心に日常的に見られ、週末の賑やかな会場でワイワイと楽しむ「お祭り型」だけでなく、ランダムで配布される特典回収を目的とした「日課型」、自分のペースで推しと向き合う「おひとり様型」、地方上映に集まる「遠征型」など、多様なスタイルが共存しているのも事実だ。




















