ティモシー・シャラメに意趣返し? PTAは悲願の受賞 第98回アカデミー賞ハイライト解説

第98回アカデミー賞の授賞式が、3月16日(日本時間)に米ロサンゼルス・ハリウッドのドルビーシアターで開催された。司会は前年に続いて、自身の冠番組の司会者でありコメディアンとして知られているコナン・オブライエンが担当した。
異例の構成となった「追悼式」と波紋

式全体の印象は、毎年このプレゼンターの進行が大きく影響を与える。その観点で言うなれば、コナン・オブライエンは最高のスタートを切ったにもかかわらず、その後は下り坂だった。素晴らしいオープニング映像で幕を開けた第98回アカデミー賞の授賞式。助演女優賞を受賞したエイミー・マディガンが演じたジュディスにオブライエンが扮し、『WEAPONS/ウェポンズ』のラストシーンをオマージュするかのように子供たちに追いかけられながら、今年のノミネート作品の世界を渡り歩く演出。2004年の第76回アカデミー賞授賞式の司会、ビリー・クリスタルが同じことをやっていたため、そのオマージュとも言えるだろう。なかでも『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』の世界でちゃんとアニメ化されていた点には目を見張った。
とはいえ、昨年も冗長なモノローグで式の時間を大幅に食ったように、今年もオブライエンは自身のスケッチ(コント)を何度も行い(会場の反応が薄いものが多く)、オスカーを“コナン・オブライエンショー”の感覚で司会していたように感じる。しかし、日本放送ではカットされたが、授賞式の終わりに流れた映像では、作品賞を受賞した『ワン・バトル・アフター・アナザー』でのショーン・ペンの役になぞらえて、「もう自分はアカデミーから“用済み”(来年は戻らない)」とも捉えられるスケッチを披露していて、最後の最後にまた面白いことをしているのがなんともズルい。
また、長い時間をかけたといえば、今年は異例の形で過去1年に亡くなった映画人を偲ぶ「イン・メモリアム(追悼セグメント)」が展開された。史上最長とも考えられる時間を使った今回は、普段のような単なる映像のモンタージュではなく、ゆかりの深い人物が直接ステージに立ち、故人への思いを語る、よりパーソナルで感傷的な構成が採られた。
ステージでは、ビリー・クリスタルが盟友ロブ・ライナー監督への思いを馳せ、レイチェル・マクアダムスが『幸せのポートレート』などで共演したダイアン・キートンや、同じカナダ出身の喜劇の天才キャサリン・オハラに向けて涙ながらに賛辞を送る。さらに、バーブラ・ストライサンドが『追憶』で共演したロバート・レッドフォードのために万感の思いを込めて歌唱を捧げる場面も。ただ、ストライサンドの登場時にマイクの音声が入らない痛恨の音響トラブルが発生してしまった。
しかし、この「特別枠」を巡って論争も起きている。本来なら誰の死も平等に悲しいはずでありながら、選ばれた人たちのみに焦点を当てて放送されていることに対し、「他の人の親族はどう思うのか?」という声や、ジェームズ・ヴァン・ダー・ビークやエリック・デイン、フランスの女優ブリジット・バルドーらが追悼に含まれなかったことに対する批判の声も上がっている。全く映らなかったことに対し、「テレビドラマでの活躍が主だったとしても、映画界への貢献を無視するのは無礼だ」といった批判が殺到した。また、インド映画界のレジェンドであるダルメンドラが除外されたことで、ボリウッドファンからは「国際的な映画賞を謳いながら、結局はただのハリウッドの身内ノリではないか」という辛辣な意見も飛び出している。
“愛され具合”がすごい監督たちと、女性陣の歴史的快挙

さて、授賞式で盛り上がりをみせたのは、間違いなく映画界から支持を集めるライアン・クーグラーやポール・トーマス・アンダーソンらの受賞だろう。
部門の違いによって彼らが直接対決を避け、クーグラーが『罪人たち』で脚本賞を、アンダーソンが『ワン・バトル・アフター・アナザー』で脚色賞をそれぞれ受賞した瞬間の安堵感と言ったら。何より、2人の名前や彼らの手がけた作品の名前が受賞で呼ばれるたびに、会場の反応は凄まじく、その愛され具合を実感させられた。
『ワン・バトル・アフター・アナザー』は作品賞、監督賞、脚色賞など計6部門を制覇。これまで幾度となくノミネートされながらも無冠だったアンダーソン監督にとっては悲願のオスカー受賞である。一方、『罪人たち』は最多ノミネートだった中で主演男優賞、脚本賞、撮影賞、作曲賞の計4部門の受賞となった。特にマイケル・B・ジョーダンの愛され具合もすごく、家族愛あふれる受賞スピーチの様子や、授賞式の後にオスカー像を持って「In-N-Out Burger」でファンサをする様子から、さらに好感度はうなぎのぼり。

また、『罪人たち』の受賞において特筆すべきは、撮影監督のオータム・デュラルド・アーカパウの受賞である。彼女は本作で、オスカー史上初となる「女性としての撮影賞受賞(兼・有色人種女性としての初受賞)」という偉業を成し遂げた。巨大なIMAXカメラを駆使し圧倒的な映像美で作品を牽引した彼女の快挙は、長年男性中心だった撮影分野において極めて重要な節目となるだろう。




















