『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪』なぜ賛否両論? 貫かれた“歌で伝える”という姿勢

『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ TABOO NIGHT XXXX』(以下、『TABOO NIGHT XXXX』)が賛否入り混じる話題作となっている。
そんな評判を耳にして、劇場へ足を運んだ。これまで原作ゲームやアニメ、そして劇場版を追いかけてきた身として、自然と期待は膨らんでいたが、背中を押した決定的な理由がある。過去の劇場版は何十回と現場でリピート鑑賞してきた友人が、鑑賞後に肩を落としていたのだ。
一方でネットでは絶賛の声も上がっており、「何が起きているのか」を自分の目で確かめたいという思いと、少しの不安を抱えて劇場に向かった。
以下、『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ TABOO NIGHT XXXX』のネタバレを含みます
本作は、劇場版シリーズ『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム』『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEスターリッシュツアーズ』に続く劇場版第3作にあたる。しかし、はっきり言って、これまでの2作とは明らかに趣が異なる。そもそも今作の主役はST☆RISHではなく、彼らの先輩グループであるQUARTET NIGHT。4人による単独ライブという形式で描かれる本作は、シリーズの中でもとりわけ異色であり、強い演出意図が貫かれた作品だ。
本編は、QUARTET NIGHTの4人がそれぞれ“怪盗”に扮し、ライブパートのある劇中劇として展開される。一人ひとりが役を担い、最終的に4つの宝石がひとつになる物語は、ただのライブ用の演出にとどまらず、彼ら自身のこれまでの歩みを重ねた“もうひとつのドキュメント”としても読み取ることができる粋な構成だ。4人それぞれのソロ曲に込められた背景の物語性に、ハッとしたファンもいるはずだ。

一方で、「初見では理解が追いつかない」という声が多く上がるのも無理はない。本作にはライブらしい長尺のMCパートや自己紹介が存在しないため、あらかじめある程度キャラクターの背景を把握していないと、意図がつかみにくい場面も多い。
ライブとは、本来アーティストとライブに集った人々が一体となって感情を共有する、一回限りの“ナマモノ”のイベントだ。だからこそ、没入感や伝わりやすさが重視される。その点において、「一度観ただけでは真意にたどり着けない」という構造そのものが、本作の評価を大きく分ける要因となっているのだろう。
パンフレットを手に取り、複数回の鑑賞を試みるのは、おそらくコアなファンに限られる。劇場(ライブ会場)という初見の観客も多く訪れる場で、公式が意図した情報設計がどこまで届くのか……そのバランスには一抹の難しさを感じた。
とはいえ、そのわかりにくさや説明のなさこそが、本作の核心ともいえるのかもしれない。MCや自己紹介といった“間”をあえて設けず、全編を通して「歌で伝える」という姿勢を貫いた構成は、QUARTET NIGHTの楽曲「エボリューション・イヴ」の〈言葉はいらない 歌があればいい〉という一節を地で行くものだ。その選択には、彼らの長年歩みを共にしてきたファンへの信頼、そして、パフォーマンスそのもので語ろうとする覚悟がにじんでいる。




















