『ぼくたちん家』3人の“共同作業”で浮かび上がる社会の生きづらさ ともえの逃亡理由も判明

『ぼくたちん家』社会の生きづらさ浮き彫りに

 ついに運命の歯車が動き始めた玄一(及川光博)と索(手越祐也)の恋模様。しかし、彼らの恋愛の行く末も、ほたる(白鳥玉季)の将来もまだまだわからないことだらけだ。ドラマ『ぼくたちん家』(日本テレビ系)の第5話は、居心地の悪い社会をいい感じに生きていくために、“共同作業”で歩き続けようとする登場人物たちの奮闘が描かれる回だった。

 玄一が暮らすアパートに引っ越してくることになった索。正式にお隣さんとなったことが嬉しくて仕方がない玄一は、ルンルンな気分で彼の引っ越しを手伝おうとする。しかし、2人だけの時間を過ごせるかと思ったのも束の間、索の元恋人である吉田(井之脇海)が引っ越しの助太刀にやってくる。

 気が気ではない玄一の前で、索と吉田は平然とした様子で言葉を交わす。どうやら「別れたら連絡を一切、取らなくなる」玄一とは異なり、索と吉田は別れたあとも友達に戻れるタイプらしい。しかし、吉田が職場の人にゲイであることを知られたくないがために、ダミーの結婚指輪をつけているのに対して、索は「そんなことしてるからずっと馴染めないんじゃない? 隠して嘘ついてるから」と答える。当たり前だが、同じゲイである3人でも、恋愛に対する考え方や“カミングアウト”の線引きはそれぞれ違う。

 今回は、特に吉田のセリフにハッとさせられることが多かった。「そっちの普通とこっちの普通、違うんですけど」「なんで同じ図を見ているのにわからんの。見ているもの違う?」など、さりげなく会話で口にしてしまう“普通”や“同じ”が、もしかしたら偏見につながっているのかもしれないと自戒する。

 一方で、アパートの大家である井の頭(坂井真紀)は突然、届いた手紙を頼りに、ほたるの母親・ともえ(麻生久美子)とカフェで落ち合うことに。「ほたるに渡してほしくて。渡せばわかると思うので」と全国各地のご当地キーホルダーを授けて去ろうとするともえに対して、井の頭は彼女を連れ戻そうとする。

 そこで明かされたともえの逃亡の理由は、社会から「なめられている」と感じたからだった。就職氷河期に契約社員として入社した彼女は、会社の経理として長く働くことができたのは、自身が「めんどくさくなかったから」だと断言する。仕事内容や契約に疑問を持たず、任されたことを淡々とこなす。そんな彼女が横領に手を染めるきっかけとなった出来事が、若い男性の契約社員がたった1年で正社員になったことだった。

 ジェンダーによる格差。正社員との格差。ともえが目の当たりにしたさまざまな不平等が積み重なり、その差額を計算した額こそが3226万1570円。彼女が会社から横領したお金の総額とピッタリ一致する。

 ほたるが何気なく口にした「高校行っていい? 安い高校ってあるのかな」という質問に、ともえは「子供にお金の心配をさせない、そういう母親でいたかったし、なりたかったんです」と述懐する。だから、あくまで自分のために、お金を横領したのだと。井の頭が「私なら(ほたるを)絶対に置いていかない」と言うように、彼女の言い分を「すべてわかる」と簡単には言えない。それでも、写真の画面越しにほたるの頭をなでるともえの表情を観ていると、自分の都合で子供を置き去りにする母親とは思えなかった。お土産のキーホルダーにも、ほたるにしか伝わらないメッセージがあるのかもしれない。

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