『ザ・ロイヤルファミリー』は家族のあり方に再考を促す “耕一”目黒蓮の怒りの矛先は?

ファミリーに入った亀裂。週タイトルに「日本ダービー」の名前を冠した『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)第5話では、疑惑の渦中にある親子の姿が描かれた。
ロイヤルホープは佐木隆二郎(高杉真宙)が騎乗し、中央競馬で鮮烈なデビューを飾った。快走を続けるホープは年末の有馬記念を目指して日本ダービーに挑む。
週刊誌に報じられた山王耕造(佐藤浩市)の隠し子問題は波紋を広げ、競馬事業にも波及。広中(安藤政信)と佐木は、ロイヤルホープを勝たせようと闘志を燃やす。栗須(妻夫木聡)は心中複雑だった。腹心の部下である自分に「裏切るな」と厳命する耕造が、知らせてくれなかったことに納得していなかった。
「社長にはホープを有馬に連れて行くという使命があります」
一蓮托生の栗須は、耕造の命を受けて、耕造の愛人である中条美紀子(中嶋朋子)との一切を担うことになった。美紀子には大学生の息子の耕一(目黒蓮)がいるが、父親について知らせておらず、耕一の対応もそこに含まれる。
青天の霹靂のように飛び込んだスキャンダル。ドロドロした愛憎劇を想像した視聴者は、やや肩すかしを食うことになった。時を超えて血のつながりが生むドラマをテーマとする今作において、競走馬の血統だけでなく、血縁関係で成り立つ家族のありようが描かれることには必然性があった。
第5話は、家族のあり方に再考を促すようだった。耕造と京子(黒木瞳)の夫婦仲は冷えきっており、京子は夫の浮気にも冷淡な反応。優太郎(小泉孝太郎)は「計算と妥協」が家族にも必要と語る。長女の百合子(関水渚)は競馬事業に興味をひかれているが、家族の問題には関心がないようだ。
妥協の産物である山王家に対して、美紀子と耕一の家族のあり方は複雑だ。美紀子は耕一の存在を耕造にも伏せていたため、実質的に母子家庭だった。耕造と美紀子、耕一を結びつけているのは競馬で、そこにはちょっとした偶然が作用していた。
中条耕一の人となりは間接的に語られる。バスの中で乗り合わせた赤ん坊に、ひょうきんな顔をして泣きやませる優しさとユーモアの持ち主。大学で競馬研究会に所属し、競馬新聞を広げる耕一は、好レースを喜ぶ競馬好きである。勝負師の顔は母親譲りだ。美紀子は競馬場で馬の様子を観察し、ひいきの馬と一番人気を組み合わせる馬連馬券を買う冷静さを備えている。そんな耕一がドラマ終盤で見せたのは激しい怒りの感情だった。
中嶋朋子演じる美紀子の親の愛情が胸を打った。「子どもって想像もつかない成長を遂げるものですね」、「大きくなっていく背中を見るのが本当に楽しみでした」は、すべての親と子どもたちを見守る人々の思いを代弁していた。先に逝く自分は息子の成長を見届けることができない。息子もそれをわかっているから、今この瞬間を大事にする。切なすぎる親子の感情だ。
だから、耕一は美紀子の遺言だったとしても、そこに父親の影を認めることはできなかったのだと思う。それを認めてしまうことは、自分と母が生きた人生を否定することになるのではないか。苦労して育ててくれた母を裏切ることにならないか。今になって姿を見せた耕造はあまりにも無責任ではないか。などと考えても不思議ではない。
血のつながりと感情の断絶のコントラストは山王家にも耕一にもあって、そのことは耕造の苦悩と深い孤独をも照射する。耕造を断罪する加奈子(松本若菜)が口にした「その人の過去に失敗も間違った選択肢もない」、「通ってきた道がたった一つの正解」は、すべての競馬ファンを救う台詞だが、同時にこのようにしてしか生きられない一人ひとりを包容する言葉でもある。
賭け事に「もし」は禁物だが、第5話で、ロイヤルホープが日本ダービーで優勝していたら、山王家と耕一、栗須と加奈子の未来は変わっていただろうか。“血”がもたらす数奇な運命を目の当たりにするほど、耕造と栗須の血縁を超えた、血以上に濃い絆が印象に残る。同じ夢を追う中で、本当のファミリーになることを示唆していた。
早見和真の同名小説をドラマ化。税理士としての挫折を味わい希望を見出せなくなってしまった主人公の人生が、馬主である山王耕造との出会いにより大きく動き出していく。
■放送情報
日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:妻夫木聡、目黒蓮、松本若菜、安藤政信、高杉真宙、津田健次郎、吉沢悠、木場勝己、尾美としのり、関水渚、長内映里香、秋山寛貴(ハナコ)、三浦綺羅、小泉孝太郎、黒木瞳、沢村一樹、佐藤浩市
原作:早見和真『ザ・ロイヤルファミリー』(新潮文庫刊)
脚本:喜安浩平
演出:塚原あゆ子、松田礼人、府川亮介
主題歌:玉置浩二「ファンファーレ」
プロデュース:加藤章一
協力プロデュース:大河原美奈、小髙夏実
編成:佐藤礼子、中野翔貴
製作:TBSスパークル/TBS
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/RoyalFamily_tbs/
公式X(旧Twitter):@royalfamily_tbs
公式Instagram:royalfamily_tbs
公式TikTok:@royalfamily_tbs
































