北川景子、『ばけばけ』で“汚れ”をこだわり抜く 雨清水親子の作り込みに制作陣も感銘

北川景子が朝ドラでこだわり抜いた“汚れ”

 髙石あかりがヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』が現在放送中。松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語。

 第28話では、トキ(髙石あかり)が生みの母・タエ(北川景子)の物乞い姿を目にしてショックを受ける。タエに明確なモデルはいないが、境遇を参考にしたのはセツの実母・小泉チエ。名家に生まれながらも生活に困窮し、松江の街で物乞いしていたとの記録も残されている。

 史実に基づいたエピソードとはいえ、北川が物乞いする姿は衝撃的。制作統括の橋爪國臣は、最初の打ち合わせからこの展開について北川と話をしていたといい、「北川さんは『タエさんという高貴な方は、時代が変わっていけばきっと何もできなくなるでしょう。そして、自分が働くくらいなら、物乞いを選択するのも自然な流れだと思います』と。もちろん役である限り、『その人生をちゃんと生きたいと思います』とおっしゃっていました」と振り返る。

 北川からの要望は、やるからにはしっかりと物乞いになること。女優のままの綺麗な物乞いにはなりたくないと、自ら申し出たという。

「タエの着物はもちろん、トキら貧しい生活をする人々が着ている着物は一度水洗いし、あえてしわをつけるといった工夫をしています。北川さんには、長くお風呂に入っていないように見えるよう、手や顔にもきちんと(汚れを)塗っていただいて。我々が『それはさすがにやり過ぎじゃないですか?』というくらいに汚してほしい、と話していました。すごく役に入り込まれる方なので、その徹底ぶりはさすがだなと思いながら見ていました」

 一方、牛乳屋で「社長にしてください」と無茶なお願いをしていたのはタエの三男・三之丞(板垣李光人)。橋爪は「きっと三之丞自身は、社長になれないとわかっていると思うんです。それでも、タエの『人に使われるのではなく、人を使う仕事につきなさい』という言葉をずっと守り続けている。そんな悲しい男だと思うし、時代の中で、どうしてもそうせざるを得なかった親子なんですよね。ですが、そういったところもふじき(みつ彦)さんらしく、ちょっとした笑いになっている。“ふじき節”が前面に出たストーリーだと思います」と、笑いと切なさを両立する脚本の魅力を語る。

「ふじきさんとは、三之丞がただのダメ息子で、本当にひどいヤツになってしまったら面白くないよねと。何かしら彼なりの行動を起こす人であってほしいし、それが時代の中ではとんちんかんなことであって、そこの悲しみや親子関係が見えるようなストーリーを作れたらいいですね、といった話をしていました。その中で『社長にしてください』というセリフを書かれてきて、さすがだなと思いました」

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現在放送中のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』。第3週では、親からの愛情に恵まれず、“自分”というものをどう見つめていくべきか葛藤…

 一連の展開について、撮影前に北川、板垣、橋爪、そして監督の4人で話し合いを重ねたそうで、「タエは三之丞に、本当に社長になってほしいと思っているのか。実際、社長になれると思っているのか。なぜ、彼らはその道を選んだのか。このドラマでは描かれていないストーリーまできちんと話をして、撮影に臨みました。特に北川さんは、お子さんもいらっしゃって親の気持ちにとても敏感な方なので、“親子関係と時代”といったテーマについて深くディスカッションしました」と明かす。

「このドラマではわりとみんなが楽しく明るく生きているので、タエと三之丞のパートが一番悲しくて、辛いのではないでしょうか。時代に合わせて前に進んでいる人もいる中で、もしかすると一番、時代に取り残されている2人かもしれない。そこを背負っている2人の姿を描けたらいいなと思って、このキャラクターを作りました」

 時代に翻弄されながらも、それぞれの信念を貫こうとするタエと三之丞。切なくも愛おしい、親子の今後から目が離せない。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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