『ぼくたちん家』玄一と索の“できること”がほたるを支える “運命”の歯車が動き出す予感も

『ぼくたちん家』運命の歯車が動き出す予感

 一方、仁に連れられたほたるは家族の思い出の場所でもあるレイクサイドカフェに来ていた。仁が逐一、父親として玄一よりも優っている(と思い込んでいる)ところをほたるに主張する姿には、男としての幸せに固執して、父親という役割を上手く果たせない自身への苛立ちが垣間見える。

 カフェで“ダムカレー”を食べる仲睦まじい親子の姿を見て、ほたるのせき止めていた思いもついに溢れ出す。彼女は宛先不明の手紙が、母親ではなく父親の書いたものだと気づいていた。気づいていたけれど、母親が来ることをほんのちょっと期待していた。涙を流しながら、家族での楽しかった思い出を「全部、なくなっちゃった」と口にするほたるに、索は「なくなったってことは、あったってことだよ」と玄一の言葉を借りて優しく語りかける。

 逆に言えば、“あったこと”は決してなくならない。ほたるから無理矢理スーツケースを奪い取ったあと、玄一や索に追いかけられて捕まえられた仁は「全部やり直すんだよ! もっと違う人生」と言い放つ。しかし、どれだけ人生をやり直そうとしても、仁がほたるの父親であることや、再婚した家庭でうまくいかなかった事実は変わらないのだ。

 実はほたるが持ち出したスーツケースの中身は3000万円ではなく、幸せな時を過ごしていた幼い頃の思い出だった。ほたるは「もしかしたら母親が来てくれるかもしれない」と思っていたからこそ、家族が元通りになる一縷の望みをかけて、スーツケースの中身に両親を繋ぐ思い出を詰め込んだのかもしれない。

 玄一は仁に「できることを毎日やるしかない」と言う。犬の散歩をしたり、笑ってあいさつしたり、道を譲ったり、虫を逃がしたり。人よりできないことが多かった玄一にとって、ほたるの父親のフリをすることは彼が“できること”のひとつであり、「生きていても良い感じ」になるための一歩だった。

 疲労困憊で帰ってきた玄一は、犬の散歩に行っていた索とほたると再会。そこで索の足にバッタが止まっていることに気づく。ふと見ると、玄一の足にもバッタが。思わぬ偶然を前に、ふたりは「運命ですね」と言い合う。まさに“運命”の歯車が動き出した瞬間だ。

 岡部(田中直樹)が空き家の状況を確認しているときに、これまた偶然発見したほたるの母親・ともえ(麻生久美子)の目的も気になるところだが、親子契約書にサインして、同じアパートに住むことになった索と玄一の“共犯関係”の行方にも注目したい。

『ぼくたちん家』の画像

ぼくたちん家

現代に様々な偏見の中で生きる“社会のすみっこ”にいる人々が、愛と自由と居場所を求めて、明るくたくましく生き抜く姿を描くホーム&ラブコメディ。

■放送情報
『ぼくたちん家』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30~放送
出演:及川光博、手越祐也、白鳥玉季、田中直樹、渋谷凪咲、坂井真紀、光石研、麻生久美子
脚本:松本優紀、渋谷凪咲、田中直樹
演出:鯨岡弘識、北川瞳
インクルーシブプロデューサー:白川大介
チーフプロデューサー:松本京子
プロデューサー:河野英裕、西紀州、岡宅真由美
音楽:東川亜希子、神谷洵平
主題歌:「バームクーヘン」
制作協力:AX-ON
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/bokutachinchi/
公式X(旧Twitter):https://x.com/bokutachinchi
公式Instagram:https://www.instagram.com/bokutachinchi/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@bokutachinchi

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