岡山天音×森七菜、現実と地続きだった『ひらやすみ』の日々 “新品の明日”のきっかけに

吉村界人は「逆・似顔絵」?

――ヒデキ役の吉村界人さんをはじめ、他の共演者の皆さんも原作のイメージにピッタリだと話題です。
森:もう、漫画から出てきてない人、いなくないですか? 特にヒデキ役の吉村さんは、初めてお会いした時、あまりにヒデキすぎて笑いが止まらなくなってしまって。絵がそのまま現実になったみたいで、「逆・似顔絵だ!」って思いました(笑)

岡山:「逆・似顔絵」って(笑)。でも確かにその表現もわかる(笑)。吉村くんは、僕が元々持っていたパブリックイメージだと、もっとビビッドで尖っている役の印象があったんです。でも、現場での彼は本当にヒデキそのもので、彼がいる日は現場の空気がワントーン明るくなる。みんなから愛されて、いじられる、そういう存在でした。彼と掛け合いができた時間はすごく刺激的で楽しかったです。
森:吉村さんが、岡山さんのことを「あいつ、本当にカッコいいんだよな」って、しみじみ語っていたのが印象的でした。まさにリアル・ヒデキとヒロトの関係性で、お二人の絆が画面にも滲み出ていると思います。
『ひらやすみ』は心を“ろ過”する浄水器

――この物語は、すごく幸せな空気が流れている一方で、どこか切なさや、ふとした哀愁を感じる瞬間があります。ドラマ版でもそういった部分は描かれていますか?
岡山:めちゃくちゃあると思います。最初の顔合わせの時に、監督の松本(佳奈)さんが「この平屋での時間は、きっとずっとは続かない気がしている」とおっしゃっていたのがすごく印象的で。豊かに暮らしているとはいえ、彼らも一人の人間なので、ちょっとした隙間風が吹く瞬間もある。時間が進む中で、状況も少しずつ動いていく。そういう、言葉の外にある気配のようなものは、このドラマでもちゃんと描かれていると思います。
森:この漫画を読んでいると、ヒロト君たちみたいに、バケツで雨漏りを受け止めたり、タクシーも使わずに雨の中を走って帰ったりするような、そういう不便さと楽しさを両立しながら生きるのって、今の時代、一つの才能だなって思うんです。意識してそっちを選んでいかないと、なかなかできない生き方。演じてみて、その尊さがより際立って感じられました。

――岡山さんは主演として、ヒロトを演じたことで、ご自身の中に残ったものはありますか?
岡山:ヒロトを体に通して、彼が見ている世界を見る機会をいただいて、できるだけ終わった後もそのかけらを自分の中に残しておきたいと思いました。今の時代って、いろんなノイズが自分を切羽詰まった方向に連れて行こうとする環境だと思うんです。そんな中で、自分の本当の声やペース、呼吸みたいなものにちゃんと耳を澄ませるタイミングを忘れないようにしたい。ヒロトのDNAのかけらを持ったまま、この先も生きていきたいな、と思える役でしたね。

ーー森さんは近年はしっかりした役柄が増えている印象があったので、なっちゃん役が新鮮に感じました。
森:演じていても楽しかったです。私はなっちゃんほど暴れてはいないですけど(笑)、若返ったというか、何でもやっていい感覚は久しぶりで。岡山さんとあの平屋で過ごした時間はずっと忘れないと思います。

――最後に、このドラマが放送される夜ドラ枠、毎日15分という時間だからこその魅力を、視聴者の皆さんへメッセージとしてお願いします。
岡山:日常的に物語が更新されていくドラマって、あんまりないですよね。一日の終わりにこのドラマを観ていただけたら、ちゃんと「昨日の中古の明日」じゃなくて、「新品の明日」というものを始めてもらえるような……言うなれば、心をろ過してくれる“浄水器”みたいなドラマなんじゃないかなと思います。

森:『ひらやすみ』は、人生の中で何かあった時に、心にそっと手を差し伸べてくれるような作品です。忙しない日々の中で、少し呼吸が浅くなってしまっている人もいるかもしれません。でも、夜のその15分間で、このドラマに流れる優しい時間に触れてもらうことで、少しでも皆さんの呼吸のリズムが整うような、そんな時間になったら嬉しいなと思います。
■放送情報
『ひらやすみ』
NHK総合にて、毎週月曜から木曜22:45~23:00放送
出演:岡山天音、森七菜、吉岡里帆、吉村界人、光嶌なづな、根岸季衣
ナレーション:小林聡美
原作:真造圭伍
脚本:米内山陽子
音楽:富貴晴美
音楽プロデューサー:福島節
演出:松本佳奈、川和田恵真、髙土浩二
制作統括:坂部康二、熊野律時
プロデューサー:大塚安希
写真提供=NHK






















