『あたしンち』はなぜ何度もバズる? 家族の“ちょっと嫌なところ”も描くリアリティ

『あたしンち』が何度もバズる理由は?

完璧じゃない大人たちが教えてくれること

 とはいえこうした母の行動こそが、『ちびまる子ちゃん』や『クレヨンしんちゃん』、『サザエさん』とは一味違った面白さが生まれている理由ではないだろうか。というのも『あたしンち』最大の魅力は、家族というものを美化せず、その現実を生々しさたっぷりに描き出していることにあるからだ。

 母の振る舞いは時にみかんやユズヒコよりも子どもっぽく、言い争いになることがしょっちゅうある。言ってしまえばその姿は「大人は完璧な存在じゃない」という現実を、ユーモラスに体現しているのだ。だからこそ子どもたちは母に頼りきりにならず、上手く知恵を付けて渡り合っていこうとする。

 たとえば第5話「もうっっっっ」では、みかんと母が一緒に服を買いに行くという展開に。服屋でも母はいつもの調子で独特のこだわりを見せ、店員さんをポカンとさせてしまい、思春期のみかんは内心恥ずかしくてたまらない。しかし母を窘めると服を買ってもらえなくなるかもしれない……と打算的に考えて、ぐっと自分の感情を押し殺すのだった。

 また『新あたしンち』の第54話「ユズ、深夜の男飯」は、ユズヒコの自立を描いたエピソード。食べ盛りのユズヒコは晩御飯では食欲が収まらず、深夜にこっそり料理を作って食べているという。冷蔵庫の余りものから創作料理を編み出していくその姿は、中学生とは思えないほど大人っぽい。

 もちろんタチバナ家は家族仲が険悪というわけではない。かといってそれは理想化された家族像とも違い、それぞれ不満に思っている部分がありつつ、ほどよい距離感で仲良く暮らしている……というリアルな関係性だ。そうした自然体なあり方こそが、時代を超えて多くの人に愛される部分なのかもしれない。

 なお『あたしンち』の公式YouTubeチャンネルでは、過去のシリーズから名作エピソードの数々を無料公開中。ちょっと変わった家庭のどこにでもある日常風景を覗き見て、癒されてみるのはいかがだろうか。

■配信情報
『あたしンち』
公式YouTubeチャンネルほかにて、毎週月曜・水曜・金曜18:00〜配信
※祝日の配信は休止
※企画内容及び配信スケジュールは予告なく変更となる場合あり

〈配信期間について〉
・各動画(通常回および特別映像)の公開期間は45日間
・人気のエピソードは常時公開 ※視聴回数やコメント数などから選出
・第1話と一部人気エピソードのみ常時公開

『あたしンちNEXT』
公式YouTubeチャンネルほかにて、11月20日(木)18:30〜から配信スタート
〈配信作品〉
11月20日(木)配信:第6話「ユズひとりでメロン」(出典『あたしンちベスト』7巻/赤肉メロン)
12月20日(土)配信:第7話「父母バタバタ泊旅行」(出典『あたしンちベスト』10巻/固形燃料)
2026年1月20日(火)配信:第8話「夢の中のトイレ」(出典『あたしンちベスト』10巻/夢のトイレ)
2026年2月20日(金)配信:第9話「川島さみしい夏休み」(出典『あたしンちベスト』10巻/夏休みに悔いなし)
2026年3月20日(金・祝)配信:第10話「岩木くんと映画に行きたい」(出典『あたしンちベスト』2巻/これから映画)
原作:けらえいこ(朝日新聞出版刊)
総監督:やすみ哲夫
監督:のなかかずみ
キャラクターデザイン:大武正枝
声の出演:渡辺久美子(母)、折笠富美子(みかん)、阪口大助(ユズヒコ)、緒方賢一(父)、
オープニングテーマ・エンディングテーマ :「さらば」キンモクセイ
製作:シンエイ動画
©︎けらえいこ/シンエイ
公式YouTubeチャンネル:https://youtube.com/@Atashinchi
公式X(旧Twitter)https://x.com/atashinchimovie
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@atashinchi_official

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