『サザエさん』『クレしん』『コナン』 長寿アニメ“価値観アップデート問題”を考える 

『サザエさん』価値観アップデート問題を考察

 国民的アニメ『サザエさん』が、2024年10月に放送開始から55周年を迎える。4月29日から5月3日にかけては、『ゴールデン「サザエさん」ウィーク傑作選』と銘打ち、毎日1話ずつ、選りすぐりの名作エピソードが放送された。1969年の放送開始から半世紀以上にわたって愛され続けている『サザエさん』は、2013年に「最も長く放映されているテレビアニメ番組」としてギネス認定を受け、約44年という驚異的な記録を打ち立てている。米国の最長寿アニメ『ザ・シンプソンズ』の放送期間を20年近くも上回る、まさに世界一の長寿アニメと言えるだろう。

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 こうした長寿アニメが社会に与えるインパクトは計り知れず、世代を超えて愛され続ける存在となっている。長寿アニメの中には、アニメやその原作者の記念館が建てられたり、中には日本を代表するアニメとして海外へ絶大な知名度を誇る作品もある。親から子へ、そして孫へと、アニメを通してキャラクターが受け継がれていく様子は、まさに国民的アニメならではのものだ。

 しかし、長寿アニメには独自の問題も付きまとう。原作漫画で想定されている時代と放送される時代の間で、社会や価値観の変化が大きくなりすぎてしまうのだ。『サザエさん』の場合、登場人物の年齢設定を考えてみると、その時代のズレが明確になる。サザエさんは大正生まれ、波平に至っては明治生まれ。もはや令和の子どもたちにとっては、現代の日常とはかけ離れた、異世界のような世界観が展開されている。

 また、『サザエさん』の世界には、本来存在するはずのない現代の家電やアイテム、建物が登場することがある。2012年に完成した東京スカイツリーが登場したり、2008年放送の「なつかしの火の用心」では、波平がガラケーを使って家に電話をする一方、妻のフネは自宅の黒電話で応答するという、時代設定がごちゃ混ぜになったシーンがあった。さらに別の回では、Nintendo SwitchのようなTVゲームや液晶テレビが登場する場面なども。これらの描写は、アニメが現実世界とは異なる独自の時間軸で進行していることを示している。

 ネット上でも話題を呼んでいる、この“サザエさん時空”について、フジテレビの担当プロデューサーは「最初は私も悩んでいたのですが、最近はもう、そういうものというか…。やっぱりアニメ作品なので、アニメはアニメの中での設定として、必ずしもリアリティーを追求しなくていいかなぁと。“サザエさんの中で流れている時代”と考えていただければと思っています」という立場を取っている(※)。この公式の回答からも、もはや『サザエさん』には独自の時間軸があり、それに沿って物語が進行していることがわかる。現実世界の時間の流れとは異なる、アニメ独自の世界観を受け入れることが、長寿アニメを楽しむ上で重要なのかもしれない。

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