『あたしンち』はなぜ何度もバズる? 家族の“ちょっと嫌なところ”も描くリアリティ

タチバナ家のみかんとユズヒコ、母と父の4人が織りなす日常系ファミリーマンガ『あたしンち』。今でもその人気は衰えることなく、最近ではX(旧Twitter)で同作の思い出を語り合う投稿が大きな盛り上がりを見せていた。

さらに11月20日には、YouTubeでアニメ『あたしンちNEXT』の新作エピソードの公開が始まる予定だ。そこで今回は、いつの時代も多くのファンを獲得してきた同作の魅力を紹介していきたい。
同作はけらえいこが1994年から2012年にかけて『読売新聞』日曜版に連載していた作品。2019年より、続編となる『あたしンちSUPER』も週刊誌『AERA』で連載されている。またアニメ版は2002年から放送が始まり、劇場版も二度にわたって制作された。
物語の主人公はタチバナ家の長女・みかんで、思春期真っ盛りの弟・ユズヒコ、無口で気難しい父、そしてクセが強すぎる母と騒がしい毎日を送っていく。ジャンル的にはいわゆる“日常もの”だが、そのなかでも同作は他の作品より日常描写のリアリティが高いのが特徴だ。
たとえば第13話「まーたおかあさんでしょ」で描かれたのは、母が牛乳パックを「あけぐち」と書いてある方から開けず、指でぐりぐりとこじ開けたため、中身が変な風に出てくるようになったというエピソード。ほかにも母は色々なものを無理やり開けるため、みかんは「雑なんだよ」と怒るが、そのたびにそれっぽい理屈で煙に巻かれてしまうのだった。
また第7話「パンの耳などの食べ方」は、タチバナ家4人の性格の違いをコミカルに描いたエピソード。食パンは耳が一番おいしいという母、耳が嫌いだからこそ先に耳から食べるみかん、耳だけを残して内側だけを食べるユズヒコ、パンの内部をくりぬいて食べる父と、それぞれ各人各様の食べ方をしていることが明かされた。
常識外れな“母”が生む異色の家族像
こうして作中では、日常生活のなかで起きるさまざまな出来事を高い解像度で描き出した“あるあるネタ”が次々と登場。それによって時代を問わず、誰もが共感したりクスッと笑ったりできる内容になっている。
その一方で同作の魅力といえば、母による“奇行”の数々も外せない。大抵の日常ものでは母親が一家を支える常識人ポジションになることが多いが、タチバナ家の母は家族のなかでもダントツでクセが強いのだ。
母はずぼらな性格で、料理が得意ではない模様。たとえばシジミのみそ汁を作ろうとしている最中にみそが切れていることに気づき、カレールーを投入し、殻付きのシジミが入ったカレーを作り上げてみかんたちに猛抗議されるというエピソードが存在する。
しかも母はよく言えば倹約家、悪く言えばケチな性格で、食卓に質素な料理が並ぶことも多い。第107話「おかずの法則」では、父の給料日前ということで晩御飯のおかずがちくわ1本になったり、なめたけ単品になったりするところが描かれていた。そこでみかんからおかずが足りないと抗議された母は、「贅沢言うんじゃないの!」と平然と言ってのけるのだった。





















