『ばけばけ』“武士の特権”のちょんまげを切り落とす 北川景子と堤真一が示す時代の変化

『ばけばけ』北川景子と堤真一が示す新時代

 『ばけばけ』(NHK総合)第2話では、北川景子と堤真一が髪型をめぐって対立した。

 松江藩の武士だった松野家。第1話では、トキ(福地美晴)の父・司之介(岡部たかし)の立ち尽くす姿が描かれた。第2話は、トキがしじみ汁を飲むシーンからはじまる。司之介から「武士の娘がはしたない」ととがめられるトキだったが、無職の父を心配していたら、肝臓だって疲れるというもの。なお、しじみ汁で使われているのは宍道湖産のしじみである。第2話では、この「武士の娘」がキーワードになった。

 明治8年(1875年)。文明開化の波は松江にも押し寄せており、人々の身なりや暮らしぶりも変化していた。小学校で、担任の谷川原(岡部ひろき)に、野垂れ死にしないため何になりたいか聞かれた親友のサワ(小山愛珠)は「小学校の先生」と答える。貧乏で親が病弱なサワは、給料で家族を養おうと考えたのだった。

 場面は変わって、松野家の夕食。司之介は「わしがしじみで人様に食われる定めじゃったとしたら、おフミが作るしじみ汁になりたい」とネガティブ発言。イマジネーション豊かなホラーテイストはトキに受け継がれるものかもしれない。汁をすすったトキは「あー」とため息をついて、話があると切り出した。小学校の先生になって、一家のために働く。「そげしたら、父上もおじじ様も武士のままでいられますでしょ」。それを聞いた司之介の眉が曇る。

 なぜ、司之介はトキの決意を喜べなかったのか? そのわけは、タイトルバック後に明らかになる。武士の娘のトキは、茶や華道、三味線、武家の作法を学びに家格の高い雨清水家に稽古に来ていた。学校の先生になるから、お稽古はもう来ないと言うトキに“おばさま”タエ(北川景子)は「武士の娘は金を稼いだりいたしません」と言下に否定。トキの夢は一瞬で打ち砕かれたが、そこに救世主が登場する。

 笑顔で入ってきた雨清水傳(堤真一)を、一同はぎょっとした顔で見つめる。なぜなら、傳の頭にはちょんまげがなかったからである。「武士の時代はもうとうに終わりじゃ」と話す傳をタエはにらみつける。さらに、傳が織物の工場をはじめると言い出すと、タエは血相を変えて息をのんだ。

 武士のシンボルであり、帯刀とあわせて特権だったちょんまげを切り落とす。時代の変化を表すのに、これほどわかりやすい描写はない。いまだにまげを結い、刀を差している司之介とは対照的だ。傳のおかげで、トキがお稽古ごとから解放される可能性も出てきた。たたずむ大人と新しい時代に向かって歩もうとするトキの対比は、今後の展開を示唆しているだろうか。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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