北川景子、“大河”の香りをまとって朝ドラに 『ばけばけ』雨清水タエ役で第3のステージへ

北川景子、“大河”の香りをまとって朝ドラに

 ついに放送が始まったNHK連続テレビ小説『ばけばけ』。第1話では江戸幕府が倒れ、没落士族となったヒロイン・松野トキ(髙石あかり)の父・松野司之介(岡部たかし)の戸惑いが愛おしく描かれており、時代の変化、ひいては変わりゆく世の中にどう向き合って生きていくのかという普遍的なテーマを予感させる初回となった。第2話には、トキに教養を指導する松野家の親戚である雨清水タエが登場する。演じるのは、意外にも『ばけばけ』が朝ドラ初出演となる北川景子だ。

 北川はどちらかといえば、大河ドラマに縁のある俳優だ。初大河となった『西郷どん』の天璋院篤姫役では、少女らしい無邪気さと凛とした佇まいで好評を博し、序盤のヒロインたる存在感を見せつけた。『どうする家康』(NHK総合)では、織田信長(岡田准一)の妹・お市を演じ、のちにお市の娘である茶々役でも登場。1人2役を務めた。茶々役での再登場では、お市とは異なる表情の作り方や声色で大きな衝撃を与え、主人公・家康(松本潤)の前に立ちはだかるラスボスとして、物語をかき回した。過去の活躍を振り返ると、北川が濃密な人間関係と重苦しい葛藤が渦巻く大河ドラマの一翼を担える俳優だということがよく分かる。

 『ミスSEVENTEEN』でモデルデビュー、同年にテレビドラマ『美少女戦士セーラームーン』(TBS系)の火野レイ/セーラーマーズ役で俳優デビューを果たした北川。20代前半の頃は、『太陽と海の教室』(フジテレビ系)や『ブザー・ビート〜崖っぷちのヒーロー〜』(フジテレビ系)、『謎解きはディナーのあとで』(フジテレビ系)など、平成を代表する月9ドラマで王道ヒロイン役を数多く務めた。

 20代後半から30代前半では、俳優として第2のステージに進み、任される役柄が変化。『HERO』(フジテレビ系)や『家売るオンナ』(日本テレビ系)を筆頭に、葛藤を抱えつつもカッコよく働く女性を演じることが多かった。キャラクター性も、お茶目なものからクールなものまで幅が広がっていった。『西郷どん』に出演したのもこの頃だ。演じるキャラクターを魅力的に見せる芝居をしながら、視聴者と同じ目線に立って物事に対峙する主演としての存在感、真面目さや面白みを作品に宿す表情など、どの作品でも北川がいるだけでその作品の楽しみ方が明確になるような演技を見せていた。

北川景子、家庭と仕事の両立は“なかなかハード” 「“運”と“やる気”がいまに繋がっている」

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 そんな北川だが、40代を目前に第3のステージに進もうとしている。母親役を任されることが増えつつあるのだ。2025年4月クールに放送された『あなたを奪ったその日から』(カンテレ・フジテレビ系)では、食品事故で娘を亡くした悲しみから、復讐の炎を燃え上がらせる中越紘海役を熱演。実の娘への愛、誘拐した敵の娘への愛、自身の復讐心の間で葛藤する北川の芝居は、悲しみや切なさ、怒りに支配され、表情を見ているだけで涙を誘われるほどだった。

映画『ナイトフラワー』特報映像

 11月には、内田英治が原案・脚本・監督を務めた主演映画『ナイトフラワー』の公開が待機。北川は、子どもたちとの生活のためにドラッグの売人となる役柄を演じる。2作品とも、子どもを想うがゆえに極限まで追い詰められた母親役だ。20代、30代前半では見られなかった北川の表現に、思わず目が惹きつけられてしまう。

 『ばけばけ』で演じる雨清水タエ役も、広い意味でいえばトキの母親のような存在だ。そして松野家の父・母・祖父とは異なり、トキに対して厳しく接する人物でもある。ヒロインにとっての超えるべき壁として、北川にとってもはじめての母親像を作り上げていくことになるだろう。タエ自身も時代によって身の振り方を考えなければならなくなった人物だ。タエの中にある葛藤がトキとぶつかるとき、見応えのあるドラマが生まれそうな予感がする。

 朝ドラへの初出演のタイミングで踏み出した俳優としての第3のステージを経て、北川はどんな俳優になるのだろう。まずは、新たな一歩となる雨清水タエ役を堪能したい。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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