『DREAM STAGE』『キンパとおにぎり』の韓国描写、韓ドラファンはどう観てる?

日韓ドラマ、韓ドラファンはどう観てる?

 第一次韓流ブームから25年が過ぎ、日韓の留学生や語学学習者も大幅に増えた。日本における韓国文化や習慣への解像度がグッと上がったことにより、作り手側よりもテレビの前のファンの方が韓国語能力に長けていたり、カルチャーに敏感であったりすることも当然出てきた。そのため、かつてはスルーされてきた要素や描写も、韓国ドラマファンのシビアな目で見ると戸惑いをおぼえてしまうこともある。

 現在放送中の『DREAM STAGE』(TBS系)は、日韓のK-POP市場を舞台に、新人グループのトップを走るTORINNERと、彼らを追いかける才能未知数の落ちこぼれボーイズグループNAZEの友情と成長、そして彼らを取り巻くプロデューサーたちの野心に満ちた競争を描いている。K-POP版「スポ根」ドラマを掲げる本作は、日韓ドラマにおいて極めてオーソドックスなテーマや描写に振り切り、融合させた点がポイントだ。

 韓国は一億総オーディション社会と呼ばれて久しく、K-POPの世界は特にそのあり様がよく表れている。そうした社会の現実に、『スクール☆ウォーズ』(TBS系)から『ROOKIES』(TBS系)に至るまで日本人が昔から好む「挫折を根性と仲間との絆で乗り越える」「ひたむきに努力する者が天才に勝つ」というメッセージ、次々に試練が訪れるドラマチックな展開が上手くアダプトしている。

『DREAM STAGE』©TBS

 韓流ブーム黎明期の韓国ドラマでは、キャラクターの感情の起伏の激しさや、善人/悪役の明確な区分けによる展開の“分かりやすさ”が魅力でもあった。NetflixなどOTTの台頭で韓国ドラマがグローバルな存在となった現在、多様な視聴者を楽しませるため、複雑な内面を持つヴィランや綿密に練られた脚本、繊細なディレクションが好まれるようになり、本作のような軽く楽しめる作品は珍しくなった。だからこそ、王道の懐かしさに惹きつけられる視聴者も少なくないはずだ。

 企画プロデュースを務めたTBSテレビの高橋正尚はインタビュー(※)で、彼自身はK-POPに詳しいわけではなかったものの、TBSグループにはK-POPに詳しいスタッフがたくさんいたため、スターたちのどんな行動やルックスが世界中のファンの気持ちを動かしているのかを知ることができ、ストーリーに組み込めたという。

 スタッフの英知が生かされていると感じたのは、K-POPにおけるセンターの取り扱いだ。K-POPはフォーメーションダンスが多いことや、楽曲ごとのコンセプトを重視していること、チームの多様なカラーを引き出すことを目指しているため、センターというポジションに固定されたメンバーはいない。もちろん、センターを務めることが多いメンバーがいるのもまた事実だ。TORRINERでは、楽曲によってはヨヌ(HOJIN)もセンターとしてパフォーマンスするが、宣材写真を見ると目立っているのはほとんどリョウ(岩瀬洋志)で、彼がグループのセンターという認識が強く印象付けられている。

『DREAM STAGE』©TBS

 そのため、リョウが、嫉妬に駆られたヨヌとステージ上でトラブルを起こすエピソードがある。この諍いをきっかけに、リョウが間一髪でピンチを回避するというドラマチックなシーンや、グループの不協和音を見抜いた吾妻(中村倫也)がリョウに助言をすることで二人が一層意識し合うという流れになる。正直、メンバー同士でここまで対立するグループは、現在活動中のK-POPグループだとあまり想像できないが、この“無いようである”K-POPのしきたりを絶妙にストーリー展開に使うあたり、リアルなファンの目線を感じる。

 そしてTORRINERのプロデューサーであるパク・ジスPD(キム・ジェギョン)が、目下のTORRINERメンバーや、ライバル視している吾妻とナム社長(ハ・ヨンス)に対し、強い命令口調の日本語で話しているのも、まるで韓国語を直訳しているようで気にはなる。ただ、これはスポ根ドラマならではの“あえて”の戯画化された演出として、楽しむことも可能だ。

『DREAM STAGE』©TBS

 このように韓国ドラマファン、K-カルチャー通の楽しめる要素を押さえてはいる。ただ、TORRINERのコンサートにゲスト出演する第3話には居心地の悪い演出があった。チェ代表(イ・イギョン)の命を受けたパクPDによって、TORRINERとの圧倒的な差を見せつけるためにわざとゲストに呼ばれたNAZEは、自分たちが韓国だけでなく日本やタイといったグローバルな人材で構成されていることを個性として見せるため、それぞれの国の伝統衣装を身に纏いパフォーマンスに臨む。

 この回は、日本で働く外国人が差別や偏見に晒されていることが示唆され、非常に意義深いものがあった。すべての国の文化や人に魅力があり、違いはあれど優劣はないこと、それを華やかな装いで見せたかったという意図は理解する。しかし、日本が植民地支配で韓服を制限し着物を強制した過去を振り返るなら、韓国人メンバーに着物を着せることに慎重であってほしい。日本と韓国、それぞれが文化で差異を理解し越えようとするとき、日本側は日韓の歴史の非対称性を忘れ、しばしばこうした描写を取ってしまう憾みがある。

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