チャーリー・シーンと依存症の戦い 『aka チャーリー・シーン』で知る人生の悲喜こもごも

しかし、PART.1の終盤、そしてPART.2に入ると、作品の雰囲気が変化する。時期的にはチャーリーが『ハーパー★ボーイズ』で大成功し、薬物依存症が急激に悪化していった頃だ。ここからは薬物によってチャーリーがおかしくなっていく姿が生々しく映され、本人や関係者の口からも赤裸々に語られる。薬物と酒をチャンポンにして飲み、連日連夜のパーティー三昧。それでも金はバカみたいに入ってくる。そして……せっかく築いた幸せな家庭を、自らの暴力でブチ壊し。共演者や製作者たちと築いた信頼関係を自らブチ壊し。作ってはブチ壊し、ブチ壊しては作り直し。この繰り返しだ。映像を撮りやすくなった時代だから、当時の映像も大量に出てくる。素人の私から見ても、当時のチャーリーは明らかに憔悴している。そんな過去を語っているとき、チャーリーの語気は時に荒くなり、出演者たちも当時の苦労を思い出して涙を流す。出演者の中では、まだ依存症は終わっていない。これは俳優のキャリアを辿るものというより、現在進行形の依存症患者をめぐるドキュメンタリーでもある。
PART.1と.2を通じて、このドキュメンタリーは、依存症患者と接することの苦労と、患者本人の苦悩を克明に描く。そして多くの視聴者は、依存症の治療は死ぬまで終わらないと痛感するだろう。再起と墜落の繰り返しを何度も見せられたあとだ。チャーリーには悪いが、8年の禁酒だって、また破られる可能性が高いと感じるだろう。希望を持てるかたちでドキュメンタリーは終わるが、現実は続く。映画のように酒や薬物をやめた直後にエンドロールが始まったりはしない。これからもチャーリーと依存症の戦いは続くのだ。
しかし、同時に思うのは……チャーリーがいい人でよかった、という安心感だ。酒と薬物が入っていなければ、彼は本当に俳優として才能があり、シャイで優しく、ユーモラスなナイスガイなのだろう。だからこそ本作には元妻たちや、友人・知人、俳優仲間が出演し、彼への愛憎入り混じる想いを語っているのだ。依存症の苦しみが永遠に続くことも伝わるが、同様に彼が周りから愛されていることも伝わってくるし、それくらい彼がナイスガイなのも伝わってきた。いちファンとして、彼が愛されていたことに感謝し、そしてこれからの無事を祈りたい。私も、もう彼が現実でバカをやっても面白がったりしない(笑えなくなった、とも言える)。それがチャーリーのファンとして、これからの自分が取りたい姿勢だ。
チャーリー・シーンを知らない人にとっては、依存症患者のドキュメンタリーとして、彼のファンにとっては、“チャーリー観”を改めて考えさせてくれる映画として、ぜひオススメしたい。
■配信情報
『aka チャーリー・シーン』
Netflixにて配信中























