綾野剛が愛をこじらせた男に 荒井晴彦脚本・監督『星と月は天の穴』12月19日公開

綾野剛主演映画『星と月は天の穴』が、12月19日よりテアトル新宿ほかにて全国ロードショーされることが決定した。
本作は、『ヴァイブレータ』『共喰い』などでキネマ旬報脚本賞に5度輝き、近年は『火口のふたり』『花腐し』など監督も務めている荒井晴彦が、長年の念願だった吉行淳之介の同名小説を映画化した人間ドラマ。
小説家の矢添は、妻に逃げられ結婚に失敗して以来、独身のまま40代を迎えていた。心に空いた穴を埋めるように 娼婦・千枝子と時折り体を交え、捨てられた過去を引きずりながらやり過ごしていた。そして彼には恋愛に尻込みするもう一つの理由があった。それは、誰にも知られたくない自身の“秘密”にコンプレックスを抱えているからだ。そんな矢添は、自身が執筆する恋愛小説の主人公に自分自身を投影することで「精神的な愛の可能性」を自問するように探求するのが日課だった。ところがある日、画廊で偶然出会った大学生の瀬川紀子と彼女の粗相をきっかけに奇妙な情事へと至り、矢添の日常と心が揺れ始めていく。
主人公の矢添克二を演じるのは、荒井と『花腐し』でもタッグを組んだ綾野。矢添を取り巻く女たち――女子大生の紀子を演じるのは、新星・咲耶。女性を拒む矢添の心に無邪気に足を踏み入れていく。矢添のなじみの娼婦・千枝子を演じるのは、荒井作品3作目の出演となる田中麗奈。そのほか、柄本佑、岬あかり、MINAMO、 宮下順子らがキャストに名を連ねた。
あわせて公開されたメインビジュアルには、作家・吉行淳之介が書いた題字と布団の上に座り女性から目をそらしている綾野の姿が切り取られている。
本作の撮影は2024年4月、東京近郊で行われた。主人公・矢添を演じた綾野は、「脚本に導かれたその過程は、役者人生においても、唯一無二の体験でした。今思い出しても武者震いします」とコメントを寄せている。
コメント
綾野剛(矢添克二・小説の中のA役)
映画『花腐し』に続き、本作でも荒井監督の脚本を浴びる事ができ、主人公を通して言葉の美しさと滑稽さ、なにより文学への造詣に触れられ、とても稀有なひとときでした。とある小説を主人公が説明するシーン。噛めば噛むほど、呑めば呑むほど説明台詞を逸脱し、煙草を燻らせ酒を堪能する様に台詞を生み吐き出し、生きた言葉へと昇華する。脚本に導かれたその過程は、役者人生においても、唯一無二の体験でした。今思い出しても武者震いします。
映画『星と月は天の穴』どうぞ言葉の心地を召し上がってください。
咲耶(瀬川紀子役)
「純文学の登場人物になりたい」そんな願望が私にはありました。それがまさかこんなに早く実現してしまうなんて、全力で掴みに行った紀子という人物を演じる事が出来たのは私にとってこの上ない幸せです。現代の日本映画界に真っ向から反抗するような作品ですが、美しくもユーモラスな観る文学であると私は感じます。だからこそ多くの方に御覧頂きたいと心から感じます。綾野さんがどれだけ頼り甲斐のある素敵な先輩だったのか、荒井監督とご一緒した事がどれだけ貴重で特別な経験だったのか、あの夢のような時間、語り尽くせない程です。
田中麗奈(千枝子役)
荒井晴彦監督とは、脚本を書かれた「幼な子われらに生まれ」、「福田村事件」でご一緒していました。
監督された「火口のふたり」、『花腐し』には惹かれていましたし、ご縁を感じてもいたので、お話しをいただいた時はびっくりしましたが、お声がけいただき大変嬉しかったです。
主演の綾野剛くんとの共演もとても久しぶりで楽しみにしていました。
剛くんは現場で色々とアイデアを出し、荒井監督もそれを楽しんでいるのがこちらにも伝わってきて、とても良い現場だと思いました。
役者としてだけではなく作り手として客観的にも現場を見ている視界の広い方だと改めて感じました。
千枝子に関して、彼女が何を想っているのかというのは、脚本を読んだ時点で直感的に感じましたが、
もっと細かく腑に落ちていくように、、と丁寧に彼女の背景を作っていきました。
今でも千枝子を思い出すと胸がキュッとします。
年齢制限もあり、チャレンジングな作品だと思います。
作品を観ていただいたお客様からどんな反応がうかがえるのか、楽しみにしたいと思います。
荒井晴彦(脚本・監督作)

18歳だった。彼女もいないし、女の子の手を握ったのは高校の文化祭のオクラホマミキサーの時だけだった。それもそっと。’66年の「群像」新年号、吉行淳之介の「星と月は天の穴」、「女の軀に軀を重ねても欲情は起ってこない」男は、連れ込み旅館の枕もとの棚の下の埃を見る。「数週間にわたって抜け落ちた数え切れない数の男と女の毛が、絡み合っていた」「突然、はげしい欲情が彼の中に衝き上ってきた」 これ、なんか分かると思った。妻に裏切られ、愛とか恋とかいう情感を持ち込むのを拒否し、女を「道具」として扱おうと思っている男が「道具」に敗けてゆく小説だった。映画の仕事をするようになって、いつか映画にしたいと思ってきた。やっとです。
「精神という花が咲いている。引っこ抜くとその根っこに『性』がぶらさがっている」と吉行さん。引っこ抜いていきたい。

■公開情報
『星と月は天の穴』
12月19日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー
出演:綾野剛、咲耶、岬あかり、吉岡睦雄、MINAMO、原一男、柄本佑、宮下順子、田中麗奈
脚本・監督:荒井晴彦
原作:吉行淳之介『星と月は天の穴』(講談社文芸文庫)
撮影:川上皓市、新家子美穂
照明:川井稔
録音:深田晃
美術:原田恭明
装飾:寺尾淳
編集:洲﨑千恵子
音楽:下田逸郎
主題歌:松井文「いちどだけ」ほか
写真:野村佐紀子、松山仁
製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2025「星と月は天の穴」製作委員会
公式サイト:https://happinet-phantom.com/hoshitsuki_film/





















