子安武人、『ファンタスティック4』で披露した“ヴィラン”じゃない一面 自身の“家族愛”も

子安武人、初めての経験と家族愛を語る

「あまりこだわりすぎないで、身軽でいたい」

ーーリードは本作で父親になりますが、お子さんがお二人いる父親としての立場で子安さんが共感する部分、または新米パパのリードにできるアドバイスはありますか?

子安:僕は確かに父親ではありますが、たぶんみなさんが思い描いている父親像とは全く違うというか……すごくラフなんです。何事に対してもあまり押しつけるようなことはしなくて。「好きにやりたければどうぞ、それに手助けできるようであればするけど、最終的にはやはり自分で考えて行動して」というスタンスですね。うちの家族はものすごく仲が良すぎちゃって、ある意味“世界”と言いますか、コロニーが出来上がっちゃっているんですよね(笑)。だからあまり子供が外へ行きたがらないんです。これは父親としてはマイナスというか、考えなければいけないなと思っています。巣立ちできなくなっているので(笑)。だから、子供のことを思うと、ある程度ダメな親父でいいんじゃないかと最近思うんです。やはり子供って「こんなところからなるべく早く出たい」っていう反発心があるくらいがちょうどいいんじゃないかな。だからあまり「良い父親になろう」とか思わないほうがいいんじゃないかなって。僕はそうではなく「すごく仲良くやっていけたらいいな」と思ってここまで子育てして、その目的を達成することができましたが、まぁ自立しない(笑)。本当に困っているんです(笑)。なので、子育てする上で、(子にとって)反面教師でもあるべきだなと強く思いますね。

ーーご家族の仲がとても良いとのことですが、本作のテーマは「揺るぎない家族の絆」です。このテーマについての印象はどうでしたか?

子安:良いテーマですよね。ものすごく共感できると思いました。単に勧善懲悪でヴィランをやっつける話ではなく、人間の心とは何なのか、家族の愛や絆、人との繋がりとは、ということが根底にある、素敵な作品だと感じました。リードもすごく悩んでいるんですよね。自分が今まで生きてきたなかで大切にしてきたもの、科学者の考えを持っていることが、必ずしも世界を平和に導くことではないんだという葛藤が彼にはある。やっていてとても難しかったんですけど、このテーマがあるからこそ、すごく良い話だと感じました。

ーーちなみに、リード以外のファンタスティック4のメンバーで印象的なのは?

子安:やはりスーですかね。一番絡みも多いし、二人の間にフランクリンという子供が生まれるんです。彼が生まれてから、今までの生活や考え方が少しずつ変わっていく。それまでスー的には許せてきたことが、フランクリンの誕生によって許せなくなったりするんですよね。ただ、リードも「別に嫌われてもいい、スーのことなんかどうも思っていない」というわけではなくて、妻と仲良くしたいし、何よりも彼女を愛しているから、そこの修復を彼は一生懸命やろうと思う。ただ、その上手い方法が浮かんでこないんですよ(笑)。理系で0か1かの世界にいて、すごくわかりやすい答えを求めてくる。でも人間ってもっと複雑で、そんな簡単に解けるものじゃなくて、頭で理解できても心が嫌がることって結構多いじゃないですか。それをスーが突きつけてくるので、リードにとっては大変かもしれない。「でも」って言いたくなるのを堪えている場面もあって、彼なりに頑張って成長しているんですよね。ただ、暴君的な押し付けを彼は極力しないようにしていて、それはわかっているんですよね。ペドロ・パスカルさんのお芝居もかわいらしいところが結構あって、それを拾わなければいけないと思って吹き替えをしました。

ーーやはり二人のやり取りやリードの葛藤は作品の中でも印象的でしたよね。

子安:リードがいつもすぐに怒られていて、少しかわいそうだなとは思いました(笑)。でも、「言葉ではうまく表現できないけど僕も思っていることは一緒で、愛情もあるよ」ということをリードが一生懸命やろうとしているのが、なんとも愛おしいというか。諦めないで自分のボキャブラリーやアイデンティティの中から答えを探しながら努力するんです。それがとても人間らしいし、ヒーローとして成長していく一つの過程……今回タイトルに「ファースト・ステップ」とありますが、それが本当に「ファンタスティック4」のヒーローとして成長していくステップでもあるように感じました。

ーーリードとスーはヒーロー活動をしながら子育てに追われますが、お忙しい子安さんもお子さんが生まれたときはどうでしたか? 生まれる前と後で何が変わりましたか?

子安:アフレコの仕事が終わったら「これから子供をお風呂に入れるんで!」「授乳の時間なので!」とか言いながらすぐに帰宅していましたね。若い頃はすぐに子供に会いたくて、速攻で帰っていました。今は子供たちと一緒にゲームがしたいのですぐに帰ります。

ーー本当に仲が良いんですね!

子安:そうなんです。家に帰ったらもう4人パーティーを組めるので(笑)。うちはゲームがすごく好きな家族なので、家に帰るとリビングで一緒にゲームで遊ぶこともあるんですけど、だから外に出ないんですよ。僕もなんですけどね(笑)。友達とするより家族とゲームをしちゃいます。

ーーリードは伸縮自在の身体を持っていますが、子安さんが何か超能力を得られるとしたらどんなパワーが欲しいですか?

子安:瞬間移動できるのがいいですね。遊びに行くときも、仕事に行くときもラクじゃないですか。ただ、本当に思い描いたところにちゃんと行けるという前提がないといけない能力ですよね。座標とかをちゃんとわかっていないといけない。気がついたら壁の中に入っちゃってました、とかは勘弁してほしいですけど(笑)。

ーーそれは怖いですね(笑)。改めて本作のテーマは「家族の揺るぎない絆」ですが、子安さんにとって“揺るぎないもの”とは?

子安:僕にそういうものはあまりないですね。常にフラットでいたいと思っているので、何かあってもすぐ逃げられるようにしています。だからこんなことを言うと語弊があるんですけど、ものすごく仕事が大事で、仕事一筋で仕事のためなら……という感覚が僕にはないんです。あまりこだわりすぎないで、身軽でいたいんですよね。カッコよく言えば「自由」というか「フラット」で、縛り付けるのはやめようって。自分で枷をつけたり、苦しくなることはできる限りしないようにしたい。それがストレスになることもあるので、体調や精神面にもよくないし、何かしらに響いてくるので。常に思い込まないこと。だから“揺るぎない精神”とか、そういうカッコいいものと僕は縁遠い人間ですね。「その瞬間に一生懸命に」と思っているので、この職業は向いているような気がします。普段から別にリード・リチャーズでいる必要性もないわけですし、作品ごとにそれが変わるので。

ーー最後に、本作を吹替版で鑑賞する方に向けてメッセージをお願いします。

子安:本当にペドロ・パスカルさんがものすごくチャーミングで、とても良い芝居をしているので、ぜひそちらも観ていただきたいですし、吹替版も僕を知ってくださっている方は観ていただけると楽しめるものになっていると思います。他の役者さんもすごく良いお芝居をされているので。いやー、やっぱりいいんですよ、他の役者さんが(笑)。字幕版に比べてわかりやすさもあると思うので、わかりやすく観ていただきつつ、「あっ、意外に吹き替えも面白いんじゃないの?」と思っていただくのが一番良いかなと思っています。僕の役は一見みなさんには想像できないような、とにかく意外性があるところが今回の狙いとしてあったのではないかなと思うので、みなさんが持っている僕のイメージというか、「えー、ヴィランのイメージの子安さんがどうやっているんだろう」という小さい興味でもいいので観ていただいて、「あっ、なんかちょっと違う!」と思ってもらえたら、僕にとっては嬉しいことです。

■公開情報
『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』
全国公開中
出演:ペドロ・パスカル、ヴァネッサ・カービー、ジョセフ・クイン、エボン・モス=バクラック
日本版声優:子安武人(リード・リチャーズ/ミスター・ファンタスティック役)、坂本真綾(スー・ストーム/インビジブル・ウーマン役)、林勇(ジョニー・ストーム/ヒューマン・トーチ役)、岩崎正寛(ベン・グリム/ザ・シング役)、楠大典(ギャラクタス役)、上田麗奈(シルバーサーファー役)
監督:マット・シャクマン
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
© 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.
公式サイト:https://marvel.disney.co.jp/movie/fantastic4

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