『あんぱん』朝ドラの中でも異例の“二度目の試練” 今田美桜の愛しさが詰まった叫びが響く

西日本を襲った大地震。のぶ(今田美桜)は、高知にいる嵩(北村匠海)や家族と連絡が取れないまま、不安と葛藤の渦中にいた。NHK連続テレビ小説『あんぱん』第84話では、のぶがどれほど深く嵩の存在を刻み込んでいたのかが浮き彫りになった。
戦争からの復興を経て、明日への希望を描いていくのが多くの朝ドラにおける定型だとすれば、『あんぱん』はその“希望の芽”がようやく見えかけた矢先に、再び人々を突き落とすような絶望の場面を挿入してきた。焼け野原からの立ち上がりを経て、のぶたちはそれぞれの夢へと歩みを進めていたはずだった。そんな中で、突如襲った大地震。まるで「人生はそう簡単に報われない」と語りかけるような脚本の強度があり、朝ドラの中でも異例とも言える“二度目の試練”が描かれたことは、作品の特異性を際立たせている。
地震から2日が経ち、大阪にはすでに通信が回復したが、いまだ高知とは連絡が取れない。携帯のない時代、ただ待つしかできない日々の長さは想像以上だ。のぶたちは高知に向かうことも視野に入れるが、関東大震災を経験したという世良(木原勝利)は「冷静になってください」と引き止められる。正論だとわかっていても、感情は言うことを聞かない。のぶの胸には、「今すぐ会いに行きたい」という思いだけが積もっていくのが表情からも伝わってくる。

そんな彼女の肩を、そっと支えたのが八木(妻夫木聡)の言葉だった。「あいつは死にはせん」。その一言の後に続いたのは、嵩の“生還の記録”だった。戦地での話、マラリアにかかり、飢餓に苦しみ、それでも帰ってきたこと。嵩は悪運が強いだけの人間ではない。何のために生まれてきたのか。その意味を掴もうとして、命を振り絞ってきた。のぶが落ち込んでいた時も、傍にいて支えてくれた。悩みながらも、自分の無力さと向き合いながら、いつものぶのそばで踏ん張っていた。





















