『奪い愛』シリーズがヒットした理由を紐解く 鈴木おさむによる“ドロキュン劇場”にも注目

『奪い愛』シリーズがヒットした理由

 松本まりかが主演を務め、安田顕が共演する『奪い愛』シリーズの新作『奪い愛、真夏』が、テレビ朝日系で7月19日より放送される。

 本作は、『奪い愛』シリーズの第5作目。金曜ナイトドラマ『奪い愛、冬』(2017年/テレビ朝日系)に始まり、『奪い愛、夏』(2019年/AbemaTV)、『殴り愛、炎』(2021年/テレビ朝日系)そして『奪い愛、高校教師』(2021年/テレビ朝日系)と展開してきた“ドロキュン恋愛ドラマ”シリーズで、金曜ナイトドラマ枠での放送は2017年以来8年ぶりとなる。

 本作の主人公は松本演じる海野真夏。結婚までも約束した最愛の恋人と不倫の末に別れ、自身のスクープ記者という仕事にも疑問を感じはじめる八方塞がりの日々のなか、時計メーカーのPR担当に転職。人生の新たなスタートを切ったと思った矢先、安田演じる元カレにそっくりな御曹司社長・空知時夢と出会う。しかし彼には妻がいた。この真夏と空知を中心に、さまざまな愛と葛藤が交錯する“ドロキュン劇場”が展開される。

松本まりかの“怪演”を鈴木おさむ脚本が引き出す? 『奪い愛、真夏』が再び描き出す狂気

激しい愛憎と衝撃展開でドラマ界に一大旋風を巻き起こしてきた『奪い愛』シリーズが、7月スタートのテレビ朝日系金曜ナイトドラマ枠でつ…

 脚本を手がけるのは、本シリーズの生みの親である鈴木おさむ。2024年3月末に放送作家業と脚本業から引退した鈴木だが、今回は引退発表以前から制作陣と続編を作る約束していたこともあり、特別に筆を執ることを決意したという。鈴木は「私にとって『奪い愛』は特別な作品です。2016年、仕事で大きく落ち込む出来事があり、悩んでいました。そんな中、2017年にドラマ『奪い愛、冬』の脚本を担当し、世の中で大きな話題となったことで、作り手として自信を取り戻すことができました。今回の『奪い愛、真夏』は、かなり“飛ばして”おります。これまで以上に濃く、激しく、感情が交錯する展開になると思います」とコメントしている(※1)。

 『奪い愛』シリーズが持つ圧倒的な魅力は、まさに鈴木が仕掛ける“飛ばし”、つまり“振り切った感”にあると言っても過言ではない。

 “飛ばし”は“パンチの効いたストーリーテリング”をみても顕著だ。 “ジェットコースター的”という表現では生ぬるいと思えるほどの展開に次ぐ展開、それこそがまさに『奪い愛』のコアともいえる。たとえば『奪い愛、冬』では、キュンとするラブシーンを堪能していたはずが、クローゼットから「ここにいるよー」という声と共に水野美紀が現れ、途端にホラーさながらの展開に。『奪い愛、高校教師』では三角関係ならぬ、娘も交えた四角関係に。常軌を逸した登場人物たちの次のムーブは常に予測不能で、観る側は一つの感情に留まることが許されない。しかしこの“ありえない”展開は日常では到底体験できない世界であり、まさにこれこそがエンターテインメントだと思わせる。

水野美紀、病みつきになる狂気の演技! 『奪い愛、冬』は“スゴイ”ドラマだった

3月3日に最終回を迎えたドラマ『奪い愛、冬』(テレビ朝日系)は、スゴイ作品だった。“スゴイ”なんていう曖昧な表記をしたのは、クセ…

 そして、俳優たちの“怪演っぷり”も “飛ばし”の要素を増幅させている。相手の心を奪い合う“ドロキュン”の過程において、俳優たちが見せる“振り切り感”は圧巻で、各キャラクターはスタート時にはまったく想像できないかたちで変貌を遂げていく。

 例えば、上記に挙げた『奪い愛、冬』でのシーン。夫の不倫現場に居合わせて発する第一声が「ここにいるよー」と言うのは、既に脚本の時点で “普通じゃない”感が漂っている。それを水野が見事な“壊れっぷり”でさらに加速させた。そして『殴り愛、炎』では山崎育三郎の怪演と共にこの名セリフが蘇り、『奪い愛、高校教師』では激昂した観月ありさが鬼気迫る表情で手にしていた手紙を食べるなど、鈴木脚本に煽られるかのように俳優陣の振り切った演技が次々と生み出されている。『奪い愛、高校教師』の最終話では、なんと『奪い愛、冬』の森山蘭(水野美紀)が登場。蘭が放つ“安定感のある狂気”は、『奪い愛』ファンを大いに堪能させた。

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