ブラッド・ピットが異常にカッコいい! 『F1/エフワン』で発揮された“ブラピ力”

『F1/エフワン』ブラピが異常にカッコいい

 そんなブラピであるが、本作では満を持してのド直球のアメリカンハンサム野郎を演じている。家は持たずに車中泊で、各地のレースを転々としては、結果を出して賞金・報酬でメシを食う。そして専属契約の誘いはおろか、レースの記念品すら受け取らず、次の「走りたいレース」を求めて去っていく。まさに現在のカウボーイだ。このアメリカンなスナフキン感たるや。スナフキンだけでも誰もが憧れてしまうのに、そこに濃度100%のアメリカンなカッコよさが乗るのである。最初のデイトナ24時間レースから「カッケー!」となること必至であるし、逆に「こんなアメリカンすぎる男前がいてたまるか!」となるかもしれない。しかし、どっちに転がってもいいのである。

 というのは、本作が基本的にロマン要素多めだからだ。最初に書いたように、本作は「あったらいいな」の集合体である。夢物語と言ってもいい。そういう話を成立させるには、どこかで観客に「あ、これは僕らが生きている現実とは違う、こういう世界の話なのね」と思わせる必要がある。その存在こそが本作のブラピだ。現実を生きる観客の多くは、現実の厳しさを知っている。白馬の王子様なんて素直に信じられないが、もし完璧な白馬の王子様が画面に出てきた、「その嘘、買った!」となるだろう。本作のブラピはそういう役割を果たしているのだ。見た目はもちろん、口を開けば小粋なジョークと決め台詞を連発し、チラっと脱げば体がバキバキに仕上がっている。そんな異常にカッコいい人が出てくるのだから、ここは気持ちよく映画の嘘に……いや、ロマンに乗っておこうと。

 本作は細かい見どころも多い。私のようなF1初心者でも分かる「ただ速く走るだけではない、F1の戦術」の数々も非常に新鮮だった。音楽担当のハンス・ジマーも良い。近年はクリストファー・ノーランとの仕事で有名だが、過去には『ドライビング Miss デイジー』(1989年)と『ラッシュ/プライドと友情』(2013年)の車映画の金字塔を2作も手掛けており、車の“走っている感”にかけては低速から高速まで自由自在な人物である。本作を疾走感あるドラマティックな曲で魅せくれた。

 しかし、本作に関しては……やはりブラピの“ブラピ力”を称賛したい。こんなカッコいい男を演じられる人はなかなかいないだろう。彼はスクリーンに魔法をかけた。F1に興味がなくても、往年のロバート・レッドフォードやポール・ニューマン的なアメリカンな男前を目撃したい人にはオススメしたい。そして、かつて『ファイト・クラブ』(1999年)のタイラー・ダーデンに憧れて筋トレをした、すべてのアラフォー男性にとって、本作は必見の映画だと断言する。きっとまた筋トレをしたくなることだろう。年齢を考えつつ、体を絞っていきましょう!

参考
※『ハリウッド・ガイズ スーパーインタビューブック』(1998年、集英社)

■公開情報
『F1/エフワン』
全国公開中
出演:ブラッド・ピット、ダムソン・イドリス、ケリー・コンドン、ハビエル・バルデム
監督:ジョセフ・コシンスキー
プロデューサー:ジェリー・ブラッカイマー
脚本:アーレン・クルーガー
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:f1-movie.jp
公式X(旧Twitter):@f1movie_jp

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