趣里×ジェシー『モンスター』は“現代の幸福論” 単なる法廷ドラマに収まらない魅力を紐解く

『モンスター』(カンテレ・フジテレビ系)のBlu-ray&DVD BOXが6月25日に発売された。趣里演じる弁護士の神波亮子が現代の闇に挑む本作は、リーガルドラマが好きな人もそうじゃない人も必見の作品だ。
『モンスター』が放送された2024年はリーガルドラマの当たり年だった。4月期の日曜劇場『アンチヒーロー』(TBS系)、上半期のNHK連続テレビ小説『虎に翼』は、普遍的なテーマとドラマの醍醐味を兼ね備え、多くの視聴者を魅了した。10月期に放送された『モンスター』は、2024年をしめくくるにふさわしいリーガルエンターテインメントとして、法廷ものの新しい扉を開いた。
社会正義の担い手、弱者の味方のヒーローというイメージを弁護士に抱いている人は、『モンスター』を観て肩すかしを食らったような気分になるかもしれない。主人公の神波亮子(趣里)は異色の弁護士だ。高校時代に司法試験に合格したものの、ゲーマーとして生きてきた亮子は、ある出来事をきっかけに弁護士として活動を始める。

亮子は一見するとその辺にいそうな普通の人で、言われなければ弁護士だと気づかない。どこへ行くにもカジュアルルックで、私生活は謎に包まれている。そんな亮子だが、依頼人と向き合った瞬間、彼女の秘めた能力が発揮される。独特の魅力をもった主人公のイメージに、趣里は生命を吹き込んだ。
亮子が挑むのは簡単に解決できない難事件だ。それらは手の届かないものばかりではなく、身近にあって誰もが当事者になりうるものも含まれている。超過勤務とハラスメント、盗作と整形、精子提供と偽装不倫、代替医療、ドラマの聖地巡礼とファンの暴走、闇バイト、反社と大企業の隠ぺいといった現在の日本が抱える問題が描かれる。
亮子のアプローチはユニークだ。フットワークが軽く、相手のふところに潜り込み、ときには証言を得るため“誠意”を示す。ダンサー、歌手、ヤンキーに変装し、街コンに参加するのは朝飯前。核心を衝く一言で、依頼者も気づかなかった病巣を取り出してみせる。
亮子とバディを組むのが弁護士の杉浦義弘(ジェシー)だ。亮子の気ままな振る舞いに杉浦は振り回されっぱなし。根がまじめな杉浦は依頼者に寄り添いつつ、亮子に数歩先を行かれていたのが、次第に彼女の行動がわかってきて(慣れてきて)、絶妙なバディになっていく様子が楽しい。演じるジェシーの“受け”の芝居も見どころの一つだ。

そうやって明らかになるのは、思いもしなかった真相。タイトルの『モンスター』の意味はさまざまな解釈が可能だが、各話のエピソードを通じて「誰が本当のモンスターか?」が一貫したテーマとなっている。真実が明らかになる頃には、誰もが自分ごととして考えざるを得ない。全編にわたり脚本を手がけた橋部敦子の筆が冴えわたっている。




















