『イグナイト』はリーガルドラマとして100点満点! ピース法律事務所の物語の“拡大”も期待

『イグナイト』リーガルドラマとして満点

 6月27日の放送で最終話を迎えた『イグナイト -法の無法者-』(TBS系)。

 宇崎(間宮祥太朗)の父・裕生(宮川一朗太)が無実の罪を着せられ、轟(仲村トオル)の娘・佳奈(藤﨑ゆみあ)をはじめ多くの命が奪われた5年前のバス事故。その背景にある自動運転化プロジェクトの開発会社であるGIテクノロジーズに狙いを定め、その先にいる真の黒幕たる官房長官の石倉(杉本哲太)を攻め落とす。ドラマの終幕を担う最終決戦のゆくえに関しては、概ね予想できる範疇なのは当然のこと。要肝心となるのは、それに肉付けされる部分――どのような“切り札”が用意されるのか、宇崎をはじめとした登場人物の感情と、そこから見出される物語としてのカタルシスに他ならない。

 前回のエピソードで、バス会社を相手取った訴訟を提起し、そこからGIテクノロジーズの名を引き出すことに成功したピース法律事務所の面々。事故当時にシステムエラーがあったことを証明し、それが事故の原因であることを明らかにする。また、石倉の妻が経営する会社が同社の筆頭株主であり、その癒着のため石倉が隠蔽に加担したと世に知らしめること。そして何より、裕生の無実を証明し、その無念を晴らすこと。これらがこの最終話で回収されるべき、求められるべき事柄である。

 GIテクノロジーズを退社した人物を見つけ出し、その証言から事故当日のシステム監視を請け負っていたモビリノという会社の存在にたどり着くのだが、記録はすでに処分済み。さらに石倉が直々に宇崎家に姿を現し、圧力をかけてくる。宇崎がそれに応じないと、今度は原告である母・純子(藤田朋子)が路上で刺され、証言台に立つ予定だった証人もそれに怯んで撤回を申し出てくる。一般的に“巨悪”に挑むストーリーテリングのなかで起こりうる妨害工作の定番を並べてくるあたり、このドラマがいかにリーガルドラマの基本に忠実かを証明するものといえよう。

 そうした基本のなかで、このドラマは“正義”とはなにかを貫き通す。気持ちが揺らぐ宇崎を言葉をもって焚き付ける轟。泣き寝入りする人々を焚き付けることをモットーにしたピース法律事務所の面々を焚き付けてきた宇崎を、今度は轟自らが焚き付けていく。単に感情的な側面に訴えかけるのではなく、宇崎自身の心のなかで萎れかけていた“正義感”というものに直接働きかける言葉であり、それはこれまでのエピソードのターゲット――すなわち原告となってきた人々を焚き付けてきたやりかたと同じである。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「リキャップ」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる