渡辺翔太のスター性は“瞬間的”な能力にあり 『なんで私が神説教』最終回後も続く余韻

2年間ニート生活だった主人公・麗美静(広瀬アリス)が高校教師となって“神説教”を繰り出す学園ドラマ『なんで私が神説教』(日本テレビ系)最終回は、何ともいえない静寂が画面上を支配していた。
静寂が画面上を支配する最終回に響く掛け声

静寂の理由は「私立名新学園」次期理事長である2年5組担任・森口櫂(伊藤淳史)にある。彼は学園をかつての名門校に返り咲かせるため、静や静を学園に招いた校長・加護京子(木村佳乃)たちの反対をもろともせず、問題を抱えている(とされる)75名を強制退学処分にする改革を強行する。第9話ラストで退学者リストが流出すると、マスコミから一斉に叩かれる事態に。学園は臨時休校を余儀なくされる。
最終回のちょうど中盤、誰の声も聞こえない学園に静が出勤してくる。するとすぐ後から同僚教師で2年9組担任・浦見光(渡辺翔太)が「おはよ、静先生!」(静という名前が静寂と重なる)と声を掛ける。カメラは廊下を並んで歩く静と浦見の後ろ姿をハイポジションから捉え、校内の静けさを空間的に強調する。ワンショット内でほんの一瞬だけれど、でも確かにしめやかに反響する浦見のこの掛け声を聞き逃してはいけない。各話ラストで必ず炸裂する静による(全然静かではない)説教とほどよくエモーショナルな場面音楽など、ラウドな音情報を聞き慣れているからなおさら、浦見の控えめなトーンが気になる。
普段の浦見は控えめとは言いがたい学園一の熱血教師である。職員室に入ってくるなり「おはよ!」ときんきんとした第一声、さらに相手教師の顔を覗き込んでまで朝の挨拶を押し売りするような人。同僚教師・林聖羅(岡崎紗絵)からは「バカっぽい」と面と向かって言われてもむしろ褒め言葉と捉える。ひたすら明朗活発。ひたすらポジティブ。なのになぜ上述した最終回場面では「静先生!」と発する語尾を「せんせっ!」といつものように強調しつつも、画面の静寂に呼応して挨拶のトーン自体は低めなのか。さすがの浦見でも学園閉鎖で元気がないのか。いや、どうもそれだけではないらしい……。
温存状態にある渡辺翔太の演技

浦見のトーンは控えめでも、浦見役を演じる渡辺翔太らしい中音域の高音とワンショットごとに明確な一打のような演技は俄然、細やかに一球入魂。もちろん役柄上は渡辺の演技も控えめに見えるのだが、渡辺本人の中ではその明確な一打をここぞという瞬間にきらめかそうとギラギラしているようにさえ見える。実際、きらめきギラギラ温存状態にある(と見られる)渡辺の演技は、中盤場面の前後で目を見張るほどぐんぐん活性化する。
まずは手始めにサービスショット。もどかしい空気漂う職員室から場所を変え、静と浦見と林の3人が屋上で立ち話をする。その場面のワンショット目、ペットボトルのコーラを飲む浦見の横顔をアップで捉える。浦見は大のコーラ好き。酒は飲めないが、コーラでも一応酔ったかのようにくだを巻く。浦見はコーラくだ巻きのために静を居酒屋によく誘う。そこではビールジョッキにコーラが注がれる。「おかわり!」と言って威勢よく追加注文までするこのビールジョッキコーラの初出は第3話。強制退学を遂行しようとする森口に対する不満がつのるほど、飲みっぷりがよくなる。
第5話ではビールジョッキコーラを飲み干す浦見の横顔アップがある。まるで企業CM風。確かに浦見というキャラクター性を誇示するコーラ飲みなのだが、渡辺翔太本人ののどごしを伝えるあざやかな効果がある(中村アンとの共演ドラマ『青島くんはいじわる』(テレビ朝日系)第1話ではビールジョッキでビールを飲むのどごしがさわやか)。横顔アップのコーラ飲みが画面に映るのは最終回屋上場面で2度目ということになる。ここでも一応少しトーンダウンした浦見の心情に合わせ、一口ゴクリと喉を鳴らすだけでコーラも控えめに飲んでいる。だからなんだ、ではない(!)。大好きなコーラを(しかも横顔アップのサービスショットで)控えめに飲んでまできらめかせたい瞬間が他にあるということなのだとしたら?





















