草彅剛が更新し続ける“俳優像” 『いいひと。』で芽生え、『終幕のロンド』で迎える境地

草彅剛が更新し続ける“俳優像”の核心

 草彅剛が、10月期のカンテレ・フジテレビ系月10ドラマ『終幕のロンド ーもう二度と、会えないあなたにー』(以下、『終幕のロンド』)で、2年半ぶりに民放連続ドラマ主演を務めることが発表された。

 『いいひと。』(1997年)を皮切りに、『僕』シリーズ(2003年〜2006年)、『戦争』シリーズ(2015年〜2023年)など、草彅とカンテレは幾度もタッグを組み、印象的な作品を生み出してきた。今回の主演で、カンテレ制作の連続ドラマとしては通算9作目、単発も含めれば10作目という節目の作品となる。

 “今の草彅剛だからこそできる役”を更新し続けているその特異性とは何なのか。これまで草彅の取材にも携わってきたライターの佐藤結衣氏に、その魅力と歩みを聞いた。

「草彅さんが初めてカンテレのドラマに出演した『いいひと。』は、まさに俳優・草彅剛が目覚めた作品でした。放送当時の1997年前後は、SMAPが『SHAKE』『ダイナマイト』『夜空ノムコウ』などのヒット曲を連発し、SMAPとして国民的スターの地位を確固たるものにしていた頃。木村拓哉さんを筆頭に、メンバーそれぞれが俳優業やバラエティで目立った活躍を見せていましたが、草彅さんの俳優としての本格的な活動は、やや控えめだった印象があります。そんななか『いいひと。』で見せたナチュラルで飾らないのにしっかりと心に残る芝居が世間に衝撃を与え、『第13回ザテレビジョンドラマアカデミー賞主演男優賞』を受賞するなど大きな賞賛の声が上りました。草彅さんのイメージに俳優としての顔をしっかりと刻んだ転機となる作品だったと思います」

 佐藤氏は、『いいひと。』以前の草彅について、『夢がMORI MORI』(1992年〜1995年/フジテレビ系)、1995年からレギュラー出演した『笑っていいとも!』(フジテレビ系)、そして1996年にスタートした『SMAP×SMAP』(カンテレ・フジテレビ系)という流れから「バラエティ班」という印象が強かったと振り返る。しかし、そうしたバラエティ番組で見せるコントでの一面や生放送での立ち回りから、表現者としての瞬発力の高さが垣間見える瞬間もあったとも語る。

「以前、『新しい別の窓』(ABEMA)に数々のバラエティ番組を共にした構成作家の鈴木おさむさんが出演した際、草彅さんが『SMAP×SMAP』で鈴木さんが書かれた自分のコントだけ手抜きで作られていた気がすると笑いを交えながらクレームを投げかけたことがありました。(※1)今思えば、草彅さんの面白さは作り込まれたところよりも、瞬発的な部分にこそあると思われていたからだと思います。また、草彅さんが『日曜日の初耳学』(MBS・TBS系)に出演されたときには、第二の実家のようにくつろいでいたタモリさんから『普通でいいんだ』と、ありのままの草彅剛でいることの大切さを教わったというエピソードも披露していました。(※2)そうした先輩方の言葉を素直に受け入れ磨き上げられた結晶として、演じているということを忘れさせるほどの演技力に繋がっているなのだろうなと思います」

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