松田元太の“まっすぐさ”が響く理由　『人事の人見』でにじみ出たヒューマニズムを総括

　さらに、真野（前田敦子）のようにパワハラを受けた被害者と加害者のその後の関係性や、得意なことがあっても仕事に活かすことができない人にもクローズアップ。パワハラや子育て支援、早期退職、多様性の受け入れといった課題において一方的に意見を押し付けるのではなく、パワハラの加害者、子を持つ社員がいるチームのメンバー、早期退職したいと思う人など、当事者とは逆の立場の人間にも焦点を当てているのがこの作品の特徴ではないだろうか。そしてそれを人見を通してコミカルに描くことで、重くなり過ぎず、視聴者の心に浸透させてくれる。

　日の出鉛筆の社長も、一見傲慢で社員の意見に耳を傾けない“悪”のような存在に見えたが、心の中には会社への大きな愛があって、それを作り上げてきた仲間との思い出があった。新しい考えを受け入れれば、今までを否定することになるという悩みを抱えていたのだ。そんな社長の心を解放したのも人見だった。彼がいなければ日の出鉛筆に明るい未来は待っていなかったかもしれない。

　人間同士、話し合ってみないとわからないことはたくさんあって、多様な選択肢があるということを改めて気づかせてくれる本作。ついに迎える最終回では、なんと人見が社長に就任することになる。それでも大きな態度を取ることはない。「社員」という大きな集団を1つとして見るのではなく、一人一人に目を向けようとする人見は、会社のトップに立つ人間としてどのような行動をとるのだろうか。

　里井と出会い、見込まれて大企業に就職。社員の悩みも解決し、社長にまで就任した人見のあり得ない逆転ストーリーは、松田そして人見の人柄があってこそ出来上がったもの。ちょっぴり無鉄砲だが、人に愛される才能を持つ彼の歩みがどこへ向かうのか、心から楽しみにしている。

■放送情報
『人事の人見』
フジテレビ系にて、毎週火曜21:00～21:54放送
出演：松田元太（Travis Japan）、前田敦子、桜井日奈子、新納慎也、ヘイテツ、松本まりか、小野武彦、鈴木保奈美、小日向文世ほか
脚本：冨坂友
音楽：カワイヒデヒロ
主題歌：宮本浩次「Today -胸いっぱいの愛を-」（ユニバーサルシグマ）
演出：河野圭太、山内大典
編成企画：草ヶ谷大輔
企画・プロデュース：後藤博幸
プロデュース：橋本芙美、高橋眞智子
制作：フジテレビ
制作著作：共同テレビ
©︎フジテレビ
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