Travis Japan 松田元太、“二刀流”で築いた現在地 『人事の人見』で光る自然体な演技力

Travis Japanのメンバーとして国内外のステージに立ち続ける一方で、俳優としても着実に実績を重ねてきた松田元太。ここ数年はとくに、彼の演技力に注目が集まるようになってきた。2025年春クールのドラマ『人事の人見』(フジテレビ系)では、ついに地上波連続ドラマでの単独初主演を果たし、表現者としての新たなステージに立っている。これまでに挑んできた多様な役柄とあわせて、その表現力の変遷をたどると、彼が“二刀流”という言葉に縛られることなく、自然体でそれぞれの現場と向き合い続けてきたことがよくわかる。
『人事の人見』で松田が演じているのは、文房具メーカー「日の出鉛筆」にやってきた人事部の新入社員・人見廉。海外企業からのヘッドハンティングという経歴で採用されるも、実は元バックパッカーで、ビジネスメールはおろか、会社勤めすら経験のないという“おバカでピュア”な青年だ。

注目すべきは、芝居としての精度を保ちつつ、あたかもそこに人見廉という人物が実在しているかのような自然さで立ち上がらせるバランス感。型にはめることなく、その瞬間の感情や場の空気に身を委ねるような芝居は、相手役との呼吸や会話の“温度”を敏感に察知しながら成立しており、まさにナチュラルな演技の極地といえる。
第7話のクライマックスで見せた“涙”の芝居はまさにその演技スタイルが結実した場面だった。社内評価制度をめぐる軋轢の中、人見は過去にパワハラを受けていた同僚・真野の本音と向き合い、思わず感情をこぼしてしまう。その瞬間、松田は決して過剰な演技に頼ることなく、目元にじわりと涙を浮かべる。言葉にならない思いが、静かに目から溢れる涙となって落ちていく様子は、視聴者の感情を揺さぶった。

この“人見廉”というキャラクターを通して見えてくるのは、松田が持つ日常をリアルに体現できる描く力だ。
筆者がとりわけ印象に残っているのが、2024年夏に放送された学園ドラマ『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)だ。松田は主要生徒の一人、紺野直斗役を熱演した。九九が言えないほどの成績不良で、スクールカーストでも最下層に位置づけられる「ゼロ組」の生徒。女子にモテたい一心で上位を目指すというコミカルな一面を持ちつつ、根は優しく仲間思いという、どこか憎めないキャラクターだった。この役において松田は、紺野というキャラクターの多面性を丁寧に掘り下げながら、感情がすぐに表情に出るという特徴を自然に表現していた。軽妙なテンポの中でも、一つひとつの芝居にしっかりと体重を乗せ、コミカルさと人間味のバランスを見事に取っていた点が印象的だった。特に、仲間とのやり取りの中でふと見せる真顔や、ふいに零れる涙など、細やかな表情の変化がキャラクターの輪郭を豊かにしていた。





















