リュディヴィーヌ・サニエ「出演作は“監督で選ぶ”」 フランソワ・オゾンとの再タッグを語る

フランスの映画監督フランソワ・オゾンの新作『秋が来るとき』は、フランス・ブルゴーニュの田舎で一人暮らしをしている80歳のミシェルを主人公に、サスペンス的な要素をちりばめた人間ドラマだ。秋の休暇を利用して彼女の家を訪れた娘のヴァレリーと孫のルーカスにミシェルがキノコ料理を振る舞ったことを引き金に、それぞれの過去が浮き彫りになっていく。エレーヌ・ヴァンサン演じるミシェルの娘ヴァレリーを演じたのは、『スイミング・プール』以来21年ぶりのオゾン作品出演となったリュディヴィーヌ・サニエ。来日を果たしたサニエに、オゾンとの関係や現在の演技観について語ってもらった。
「小津安二郎監督の『東京物語』を思い出した」
ーー『スイミング・プール』以来、21年ぶりのフランソワ・オゾン監督との再タッグになりましたね。
リュディヴィーヌ・サニエ(以下、サニエ):実は『スイミング・プール』以降、完全にご無沙汰だったわけではないんです。お互いに話をしたことは何度もありましたし、途中で頓挫した企画や、私から「出たい」と言っても「これは君の役じゃない」と言われたり、逆にオファーをもらっても私がピンとこなかったり……。ある意味、片思いのキャッチボールをずっと続けてきたような関係でした。でも、2000年代初頭には『焼け石に水』『8人の女たち』『スイミング・プール』と立て続けに3本一緒に映画を作れたことは、私にとって本当にかけがえのない時間だったと思っています。
ーー今回の脚本を読んだとき、どう感じましたか? 幽霊として再登場するという役どころに驚きはありませんでしたか?
サニエ:読んで最初に思ったのは、「あ、また私すぐ死んじゃうんだ(笑)」ということでした。実は若い頃、登場してすぐ死ぬ役が多くて、女優仲間から「キャスパー」と呼ばれていたくらいなんです(笑)。でもヴァレリーというキャラクターはとても興味深かったです。登場時は観客の共感をまったく得られない、感じの悪い娘として描かれます。でも物語が進むにつれて、だんだんと観客が彼女の内面に寄り添うようになります。嫌な人間だと思っていた人物に、徐々に共感が芽生えていく。それって実は、とても稀有なことなんじゃないかと思うんです。
ーーたしかに。物語を通して、ヴァレリーの抱える事情や傷が浮かび上がってきますね。役に共感する部分はありましたか?
サニエ:もちろんあります。役者として彼女を理解しなければ演じられませんから。彼女の矛盾も含めて、すべてを受け入れました。ヴァレリーは、母親から“毒”を盛られたような存在です。特別な職業を持つ母を子どもの頃に恥じてしまい、それが心の傷として残っている。一方で、母親の方も今のヴァレリーを「恩知らずな娘」として恥じています。この関係性を読んだとき、小津安二郎監督の『東京物語』を思い出したんです。親子間での“恥”の感情の交差というのは、とても普遍的かつ切実なテーマですよね。






















