『未知のソウル』に漂う“名ヒーリングドラマ”の予感 パク・ボヨンの繊細な演技も必見

ラブコメの女神からファンタジーの住人、自然体で変幻自在の演技力を持つパク・ボヨンが主演を務める『未知のソウル』がNetflixで5月24日より独占配信中だ。本作は、見た目はそっくりだが、中身は正反対の一卵性双生児が入れ替わり、本当の愛と人生を探し求めるロマンティックな成長物語。パク・ボヨンが1人2役で双子のユ・ミジと、ユ・ミレを演じるが、ミジとミレが入れ替わることにより、1人4役を演じ分ける熱演を見せている。本稿では第1話から第4話までの物語を中心にご紹介したい。(以下、ネタバレを含みます)
パク・ボヨン演じるユ・ミジとユ・ミレは、見た目はそっくりだが、中身は正反対の双子だ。ミジは漢字で未知と書き、ミレは未来と書く。姉のミレは、幼い頃から入院を繰り返す病弱な身体を持つが、頭脳派で、慎重かつ責任感のある性格だ。妹のミジは、勉強は苦手だが、抜群の運動神経を持つ。楽天的で明るく陽気な性格をしている。その明るさは、人気少女マンガの『キャンディキャンディ』の主人公キャンディになぞらえ、「ユ・キャンディ」と呼ばれるほど。
ミジは、自分の名前が「未知」であることから、「昨日は終わった、明日は先、今日は未知だ」が1日を始める口癖だ。標語として貼っておきたくなるような、潔く美しい台詞。ともすれば、過去や未来に行きがちな私たちの気持ちをしっかりと「今」に着地させてくれる。そして始まる「今日」を、自身の名前である未知にかけて、まだ知らないことや「今」を大切にすることの重要性を説く人生のお守りのような台詞だ。

美しいイントロにも触れておきたい。優しい光の差し込まれた、柔らかな描写はとてもエモーショナルで、これから始まる物語への期待を膨らませてくれる。主人公であるミジとミレが、母親のお腹にいた頃から映し出され、目にする機会の少ない双子の超音波画像など、彼女たちの成長過程をなぞるプロセスを経て、すっかりミジとミレに感情移入させられる。
“陽キャ”のミジに、“陰キャ”のミレ、というように物語は始まるが、このドラマは、最初の掴みから見入ってしまうポテンシャルの高さがある。無職のミジが、勤務先でいじめに遭っているミレと「入れ替わり人生」を送り始めるという展開で始まる本作だが、第4話までの間に、伏線が貼られては回収されていく。さらに、「陽キャ」「陰キャ」という人の側面だけではなく、人間の持つ複雑さや矛盾、自身に対する厳しさがゆえの苦しみなどが次々と表出し、物語を豊かにする。さながら、曲がりくねった道を歩いているような感覚だった。

金髪のミジが、高校の同級生で弁護士のイ・ホス(パク・ジニョン)から、ソウルに住むミレの様子がおかしいと告げられたことから、物語は動き出す。エリートとして公企業に勤めているミレだが、会社で酷いいじめに遭っていたのだ。そして、苦しむミレは、ミジの目の前で自身の部屋のベランダから飛び降りる。すんでのところで、ミジが駆け付けるが、助けようとしたミジもろとも落ちた時には思わず胸がキュっとなった。

助かったミレだが、呆然と川を見つめるミレの姿を見たミジは、幼い頃からしてきたように「入れ替わって生きる」ことを提案する。ここから、パク・ボヨンがミジ、ミレ、ミレのふりをするミジ、ミジのふりをするミレの4役を演じ分ける。髪形や服装はもちろんのこと、目の動かし方から、口調や声のトーン、身体の動かし方と、繊細な感情表現を演じ分けるさまには目を奪われる。ミレの息の詰まりそうな灰色の現実、透明人間として扱われている毎日から逃げられない辛さと、空虚さが見事に伝わってくる。




















