『あんぱん』と『めおと日和』が描いた戦前 “昭和11年”を知ることで見えてくるもの

昭和11年、のぶは女子師範学校で教師になるための勉強をしていた。女子師範学校で同級生のうさ子(志田彩良)が「学を修め、業を習い、以て智能を啓発し」と教育勅語を暗誦する場面がある。教育勅語は明治時代に発布された教育の基本方針で、「忠君愛国(君主である天皇と国のために尽くせ)」という教えが語られている。教師の黒井雪子(瀧内公美)は、「忠君愛国の精神を肝に銘じなさい」と生徒たちに厳しく叩き込んでいた。
『あんぱん』では、昭和12年(1937年)以降のことも描いている。この年の7月、ラジオで「盧溝橋事件」を報じるニュースが流れると、羽多子(江口のりこ)は「また支那と戦争ですか」と嘆く。この事件をきっかけに、日本は中国との泥沼のような戦争に突入する。朝田家で石工をしていた豪(細田佳央太)に赤紙が届くのもこの年のことだ。

女子師範学校ですっかり「愛国の鑑」となったのぶは、昭和13年(1938年)に卒業して、尋常小学校の教師となる。子どもが教室で「ヒットラー総統のドイツ軍がポーランドに勝ちました。日本の兵隊さんらも支那で頑張って戦こうてくださってます」と言うと、のぶが満足げに「立派な心がけです」と頷く場面が印象的だった。人々の考えも生活も町の風景も一気に戦争に染まっていく様子は、2023年の映画『窓ぎわのトットちゃん』と通じるものがある。
なお、『波うららかに、めおと日和』でも、原作では盧溝橋事件が勃発、瀧昌の出征まで描かれている。当然、ドラマでも同じような展開になっていくだろう。いつまでも二人のぎこちなくも甘い様子を見ていたいが、時代が許してくれなさそうだ。
昭和11年だなんて、はるか昔のことのように感じるが、先日逝去したプロ野球のスーパースター、元巨人軍の長嶋茂雄さんが生まれた年だと考えると、それほど昔のこととも思えない。過去、現在、未来は地続きだ。昭和11年がどのような時代だったかをあらためて知ることは、二度と同じ過ちを起こさない手助けになるはずだ。
西香はちによる同名コミックを原作としたハートフル・昭和新婚ラブコメ。昭和11年を舞台に交際ゼロ日婚からスタートする、歯がゆくも愛らしい“新婚夫婦の甘酸っぱい時間”を丁寧に描く。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、二宮和也、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK
『波うららかに、めおと日和』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:芳根京子、本田響矢、山本舞香、小関裕太、小宮璃央、咲妃みゆ、小川彩(乃木坂46)、戸塚純貴、森カンナ、高橋努、紺野まひる、生瀬勝久、和久井映見ほか
原作:西香はち『波うららかに、めおと日和』(講談社『コミックDAYS』連載)
脚本:泉澤陽子
音楽:植田能平
主題歌:BE:FIRST「夢中」
プロデュース:宋ハナ
演出:平野眞
制作協力:FILM
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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