塩野瑛久が体現した究極の“メロ”と暴力 『魔物(마물)』は視聴者に「愛とは何か?」問う

塩野瑛久が体現した韓国式の“メロ”と暴力

 さらに、メインキャラクター2人の名前、「華陣(かじん)あやめ」「源凍也(みなもといてや)」にも両国のカルチャーが巧みに内包されている。

『魔物(마물)』はただの“マクチャンドラマ”ではない 塩野瑛久が成立させた“ありえない男”

現在放送中のドラマ『魔物(마물)』(テレビ朝日系)は、テレビ朝日が韓国の制作会社「スタジオ・SLL」とタッグを組み、『主君の太陽…

 まず、華陣あやめの「かじん」。日本人の名前として違和感を覚える音であるため、まずは無国籍感を演出するという意図があると思われる。さらに韓国語の「カジダ」の響きに似ており、「(お金や能力を)所有している」を連想させる。弁護士であるあやめは「華陣先生」と劇中で呼ばれることも多く、名前自体から「(社会的に)成功した人」が想起されやすい効果が生まれている。また「あやめ」は花の菖蒲との関連が真っ先に想起されるが、1話冒頭で被告人として出廷しているシーンがあることから、「殺める」との関連が暗に示唆されているとも受け取れる。

 そして源凍也の「いてや」。これも日本ではまず聞かない名前であり、「凍てつく」など冷酷な印象を受ける。つまり “メロ”とは真逆の印象で、不穏な展開を十分に予期させるものとも言える。しかし韓国語として考えると、印象が変わる。「イテヤ」という名前自体は一般的ではないものの、それぞれの音は「イ(이):知的、中性的、柔らかい 」「テ(태):大きい、広い、安らか、包容力 」「ヤ(야):親しみ、カジュアルな印象」を連想させる響きがあり、印象としては「堂々とした安らかさ、温かみ、優しさ」いうイメージを思わせる。日本語の響きとは対照的なニュアンスなのだ。第5話において、お姫様抱っこであやめをベッドへ運ぶ“メロさ”を見せたかと思うと、妻・夏音をゾッとする目つきで恫喝する凍也。名前が持つ“優しさ”と“冷酷さ”の二面性は、キャラクターの造形と深く連動している。

 折り返しを迎えた『魔物(마물)』は、韓国のドラマキューブ、JTBC2、さらには200の国や地域で放送されることが決定している。日本と韓国、それぞれのカルチャーを巧みに内包しつつ、クライマックスに向かって今後ますます怒涛の展開となっていくであろう。

『魔物(마물)』の画像

魔物(마물)

テレビ朝日が、韓国のスタジオ・SLLとタッグを組んで送る日韓共同制作オリジナルドラマ。不倫、DV、セックスなど愛と欲望にまつわる過激なテーマを掲げたラブサスペンス。麻生久美子と塩野瑛久が初共演にして濃厚なシーンに臨む。

■放送情報
『魔物(마물)』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15~24:15放送
出演:麻生久美子、塩野瑛久、北香那、神野三鈴、佐野史郎、大倉孝二、落合モトキ、宮本茉由、宮崎吐夢、うらじぬの、若林時英
原案:シン・ウニョン
脚本:関えり香
監督:チン・ヒョク、瀧悠輔、二宮崇
音楽:jizue
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)、パク・ジュンソ(SLL)
ゼネラルプロデューサー:中川慎子(テレビ朝日)、チェ・へウォン(SLL)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、イム・チョヒ(SLL)、河野美里(ホリプロ)
制作著作:テレビ朝日・SLL 
制作協力:ホリプロ
©テレビ朝日・SLL
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/mamono/
公式X(旧Twitter):https://x.com/mamono_tvasahi/
公式Instagram:https://www.instagram.com/mamono_tvasahi/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@mamono_tvasahi/

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