2025.05.29 05:30

JO1 豆原一成が語る、“表現者”としての現在地　『PRODUCE 101 JAPAN』から続く歩み

文・取材＝佐藤アーシャマリア、写真＝はぎひさこ、ヘアメイク＝河本茜、スタイリスト＝岡本健太郎

　豆原一成（JO1）が映画初主演を務める『BADBOYS -THE MOVIE-』が5月30日に公開される。田中宏による伝説的不良漫画を原作とした本作で、豆原は裕福な家庭のお坊ちゃんから、「極楽蝶」八代目トップになる主人公・桐木司を演じた。人生で初めて特攻服に袖を通し、JO1としての活動と並行しながら撮影に臨んだという豆原は、「アーティストとしての自分」と「俳優としての自分」の違いを意識しながら、役に向き合っていったという。原作へのリスペクトや、芝居についてのJO1メンバーとのやりとりなど、初主演作に込めた思いを聞いた。

「演技とパフォーマンスはやっぱり別物」

ーー映画初主演作ということで、オファーが来た際の率直な感想を聞かせてください。

豆原一成（以下、豆原）：これまで演技の仕事は何度か経験させていただいてきましたが、主演は初めてだったので、本当に嬉しかったです。しかも主題歌がJO1というのもあって、「これは気合を入れて頑張らないと」と思いましたね。

ーー初主演が決まったときのメンバーの反応は？

豆原：僕が不良系の作品を好きなのはメンバーも知ってくれてたので、「いいやん！」って、すごくポジティブに受け止めてくれました。ただ、今回演じたのが“強い不良”ではなかったので、「実は弱い役なんよ」って話したら、「そっちなんだ（笑）」「逆に面白いやん！」と盛り上がってくれました。

ーーJO1としての活動と並行しながらの撮影だったと思いますが、現場との切り替えはどのように？

豆原：撮影の時期は、JO1としての活動とちょうど重なっていたのですが、メンバーに会うと自然と“素の自分”に戻れるというか、リラックスできるんです。だから、あえて「切り替えよう」と意識するというよりは、自然と切り替わっていた感じです。逆に撮影現場に入るとスイッチがパチンと入って、『BADBOYS』の世界に入り込む。どちらの現場も、自分の中でしっかり居場所があるなと感じていました。

ーー原作ありきの作品ならではの難しさもあったかと思いますが、どの程度原作を参考にしていましたか？

豆原：原作漫画とアニメ版も観させていただきました。漫画とアニメの司は表情がコロコロと変わるんです。実写版で自分が演じる時は、漫画的な司と、3次元的な司の中間を狙いたいなと思っていて。原作やアニメを観ていた方が「司ってこういう顔するよね」というのと、「現実に司がいたらこんな感じだよね」というのを両立できたら、と考えていました。

ーーアーティストとしての活動が、表情や感情表現に活きていると感じることはありますか？

豆原：表情のコントロールについては、確かにリンクする部分はあるなと感じています。でも、演技とパフォーマンスはやっぱり別物だなと思っていて。JO1としてステージに立っているときは、「俺を見て！」というエネルギーを全面に出すんですけど、俳優としては役の人生に入り込んで、その人物として“自然に存在する”ことが求められる。そういう違いがあるからこそ、演じることの奥深さを実感しています。

ーー『BADBOYS』撮影中、西川達郎監督とはどのようなディスカッションがありましたか？

豆原：西川監督は、作品の中で描きたいビジョンがすごく明確な方だったので、そのイメージに自分の芝居をどう合わせていくかを大切にしていました。細かい動作や表情のひとつひとつまで丁寧に共有してくださって、自分なりに理解しながら形にしていきました。

ーー印象的だったやりとりや指導はありますか？

豆原：アクションシーンについては、「好きにやっていいよ」と言っていただけることが多く、とても楽しく挑めました。中でも印象的だったのは、「相手によって拳の重さを変えてほしい」と言われたことです。最初に戦うヒロ（岩永丞威）は司にとって強い相手なんですが、その後に出てくる段野（兵頭功海）はヒロですら勝てない存在。だからこそ、ヒロとの戦いよりも、段野との戦いでは拳がより重く感じられるように演じてほしいという指示があって。そういうディテールの積み重ねで、司という人物を作っていきました。

ーーお芝居についてメンバーと話すこともあるんですか？

豆原：あります。でも、僕は「演技の正解はひとつじゃない」と思っているので、相談というよりは「こういうアプローチもあるんだな」と、視野を広げる感覚で話しています。『BADBOYS』の撮影の時期は、ちょうど（川西）拓実くんが『バジーノイズ』の公開を控えていて、（木全）翔也くんや（金城）碧海くんたちも『逃走中 THE MOVIE:TOKYO MISSION』の撮影中だったんです。だから「今の芝居ってどうだった？」「『バジーノイズ』の時はどんな感じだった？」とか、互いの現場の話をしながら、お互いに刺激をもらっていました。

ーー司というキャラクターに共感できた部分や、「自分とは違うけどいいな」と思ったところがあれば教えてください。

豆原：共感できたのは、「目標に対する真っ直ぐさ」です。でも、感情をそのままぶつけて行動するっていうのは、自分にはなかなかできない部分でもあって。やっぱり自分はグループで活動している中で、他のメンバーやスタッフさんのことも考えながら、「今は引いたほうがいいかな」とか、いろんなことを考えてしまうんです。司みたいに周りを気にせず自分の想いだけで動けるのは、ある意味での強みになるなと感じました。